前のエピソード――２．しまこたちは鵜飼いの鵜

　簡単です。

　女性の地位が低いからです。

　女性がある一定の年齢を超えて正社員になろうとしても、仕事はありません。「わたしたちはそういう女性にも門戸を開いているのよ！」と言われました。

　シングルマザーが多い職場でした。つまり、生活がかかっているので辞められないのです。どんなに給料が安くても「正社員」で働かねばならないのです。

　そして、学歴が低い人も多かったです。全員に確認したわけではないのですが、大学に行っていない人も多く、時には中卒の人もいました。「学歴に関係なく、高収入が得られる！」ともよく言われました。中卒では、さらに仕事も選べないでしょう。

　足下を見ている、と思っていました。

　辞められないのを逆手にとって、ありえないノルマを課しているのです。

　わたしにはありえないノルマでも、でも、頑張って売り上げを伸ばせば高収入が得られる！　頑張ったら頑張っただけ、お金になる！　そういう刷り込みを毎日されました。

　金金金！　です。

　いいのです。子育てにも生活にもお金かかりますから、金金金！　でも。むしろ当たり前かもしれません。

　ただでも、しまこはあまり、金金金！　っていう気持ちになれなかったのです。なんていうか、苦手なのです、そういうのが。随所に「詐欺みたい」と思う場面があったので、よけいに「何がなんでも売りつけよう」とも思えず、お客さまに提案はするけれど、「でも今は要らないわ」と言われたら「分かりました！」とすぐに引き下がって帰って来ておりました。そんなわけで、一つも売れないままでした。

　しまこに、金金金！　みたいな気持ちがあったら、きっともっと頑張れたと思います。何しろ、しまこはお客さまの信頼は勝ち得ていたと思うからです。今年は売れなくても、三年目くらいには売れていたと思います。

　でも、しまこには、金金金！　という発想がないのです。どうしても。

　周りのみなさんは、一攫千金を狙う、金金金！　な方が多かったです。違う方もいたかもしれませんが。

　この職場で、女性の地位の低さを見たとき、日本の社会の歪みを見た気になりました。

　最初、拠点長が女性で、おお、これはいいぞと思いましたが、誤りでした。その上は全部男性なのです。鵜飼いの鵜。鵜たちのリーダーは同じ女性。でも、鵜飼いは基本的に男性なのです。鵜飼いが拠点に来ると、おもてなしがされます。気持ち悪かったです。鵜飼いの話は詐欺めいていると思いました。

　日本の男女格差はいつになったらなくなるのでしょうか。

　とても残念です。

　妊娠出産子育てがマイナスに働くなんて、間違っていると思います。

　子育てがひと段落した後に、何らかの理由で働こうと思ったときに、きちんとした仕事が出来る社会であって欲しいと思います。某保険会社の営業がきちんとしていない、というわけではありませんが、あれはあまりにも薄給でした。離職率も高く、常に人員募集していました。しまこは、人員募集するのではなく、辞めない職場づくりをすべきではないかと、ずっと思っていました。

　辞めない人は辞められない人です。

　それか、金金金！　と思える人です。