第8話 持論なんだが



「で、理由を詳しく教えたいと思うんだが準備は良いか?」


 2別室に移ったセイジさんは今回の説明を初めた。

 まあ、要約すると話は、


・いま世間に現れているダンジョン現象を安定させるための巫女探しをしている


・その巫女を選ぶ儀式に外部の者を付けろとのお達しが出た


・理由としては偉い人曰く、一種類のチカラよりさまざまな方向からのチカラの方がより複雑かつ強力な術が組めるから


 だいたいこんな感じの理由だそうだ。金属が合金にしたほうが強いみたいな感じ?と聞くと「そんな感じ」と返ってきた。


「あの〜自分は多少は心得はありますけど、何かしらの体系立てた技術やまじないを習得している訳じゃ無いんですよ」


「なに?では昨日見せたあの防御力と一瞬の姿はなんと?」


「先日拾ったカメに呪われたらしいんですよ。おい、出て来たらどうだ?」


 呼んでみると俺の影からしぶしぶといった様子で出て来た。


「ワイも積極的にアピールしてないからあんま悪く言えへんのやけどな?名前付けといて呼ばずに放置するんや無いで?忘れて無い?ちょっとワイを呼んでみ?」


「え〜っとクラクラ……?」

「ワレコラてめぇがワシに付けたんやろが!」

「すまない、クラム」


「ゴホン、その亀の妖怪が?」


「えぇ、自称陰摩羅“亀”のクラム。クラムってのはつい先日名前付けてくれってせがまれたから自分が付けたんですが」


 セイジさんはまじまじとクラムを観察している!やっぱりマズかったか?いや、妖怪だからそれならもう居るやん?ってなってるのか?


「…………クラム、君は甲太君に拾われる前には何処に居たんだい?」


「あー……えっと、どっかの蔵の中……やね」


「その蔵ってちょうどあんな感じ?」


 セイジさんは屋敷の窓の外を指す。いかにもザ・日本家屋にある蔵が裏手に見えた。


「そうそう、あんな感じあんな感じ。と言うかアレやね」


 ピキリ、とセイジさんの眉間にシワが寄る。え?コイツここに仕舞われてたんか?だったら何でここに来たんだ?


「まあ怒らないで欲しいが、アンタら陰陽師の使いっ走りになるのヤだったもん。使命がどうとか義務がどうとかさぁ、その点コイツは良かったぞ?怠け者では無いがやる気に満ちても無く、ほどほどな感じがしたからな。」


 目頭を抑えて苦い顔で居るセイジさん。

「やはりあの時、ウチの姫様が外部の人間を探して組まされるのが嫌だからと魔法使いの本や道具、服を探しに蔵をひっくり返してる時にポロッと出て行ったのか?」


「ああそうやな。ずっと蔵に仕舞われるのも真面目くさった奴と組まされるのもヤだったからな。肩の力が抜けてるコイツ見つけてよっしゃ今の内や!ってなったよね」




◇ ◇ ◇




「さあやって来ました不思議のダンジョン!今日突入するパーティーはこちら!」


「バカな事やって無いで行くわよ!」


「あんまりデカい声でキンキン言わないで耳に響く」(ヽ´ω`)


 俺はマリとダンジョンに来ていた。あの後聞いてみたが陰陽師の血統じゃ無ければ良いらしいとの事で、あっさりと組まされたのだ。


 基本的に彼女は今の状況に納得がいってなく、クラムの冗談にいちいち怒るのだ。まあ、クラムも皮肉を言う様な事をしなきゃ良いのにとは思うんだけどさ


「あ、敵」


 俺は陰陽師の御屋敷から拝借した玄翁を振りかぶり餓鬼、洋風に言えばゴブリンの頭を殴る。ぶっちゃけまっすぐに駆け寄って来るだけだから度胸があればどうとでもなるんだよね。まあ、初心者が油断してやられる事もあるから注意するようにって言われるけどさ。


「アンタ……妙に手慣れてるわね。でも産まれた時からこっち側とかじゃ無かったんでしょ?ひょっとしてヤバい奴?」


 あぁ、この娘もやっぱりそう思うのかね。まあ普通はそうか。


「これは自分の持論なんですがね?生き物を殺す事が悪いんじゃなくて、“理由も無く” “いたずらに”殺すのが良くないんですよね。あー、たとえば、駅や地下道にネズミがめちゃくちゃ湧いてて駆除業者が駆除しますよね。それは駅や地下道が不衛生になる事に対して殺すって解決をしているのであって、駆除業者はネズミぶっ殺すのが好きで楽しくてやってる訳じゃ無いんですよ。」


 俺の持論に少し複雑そうな顔をして何か考え始めたマリ。静かだとけっこう可愛らしいと言うか落ち着いた雰囲気の顔立ちだな。あんなにキンキン言わなきゃ良いのに。


「あ、餓鬼」


 まあ、それは置いといて、ふたたび現れた妖怪に玄翁を振り下ろしていた

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トキシング コトプロス @okokok838

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