第4話 何から始める?
昨日の1件で割とクタクタだったからかいつもより重い身体を「よっこらしょ」と起こす。
さて、飯を作るのもめんどいし散歩がてらバイト先に飯買いに行…………あ゛っっっ!そういや怨霊が来たから抜け出してそのまま帰ってきちまったんだった!
あーーやらかした。交代で来る森くん困ったかな……店長キレてないと良いんだけど……
おそるおそるスマホを確認すると着信履歴には3件電話が掛かって来ていた。
森くんから1件、店長から2件来てるな。てっきり何十件も鬼電掛かって来てると思ってたら拍子抜けしちまったよ。
俺はしぶしぶ店長に電話を掛ける。
なんだかんだお世話になってるからね、ブッチはワイの美学に反するからな!
「すみません店長!緊急事態で店を空けてそのままにしてしまいました!今店ですか?さっき起きたのですぐに向かいます!」
電話が繋がった瞬間に謝罪からの反省してますムーヴを畳み掛ける!悪い事したから謝らなきゃって意識はあるが、それはそれとして怒られたくは無いから相手の出鼻をくじく。コレ。
108の技の中でネゴシエーション系スキルに分けられる内の一つ「畳み掛け」だ。後の先のネゴシエーション系スキル「ドア・イン・ザ・フェイス」もあるが、こちらは相手が聞く体制じゃないと効果が薄いから今回は先攻かつ速攻、兵は拙速を尊ぶからね(´・ω・`)
「………コ……コウタくんかい?怒って無いからコンビニまで来てくれるかい?」
と言って“ブツリ”と電話を切る店長。コレは俺の“畳み掛け”が効いたかな?
俺は服を着替え、昨夜ウチに転がり込んで来たカメに外出の旨を伝える。
「いや〜面白そうだから自分もついて行って良いか?」
そう言いながら既に俺の肩に捕まってるカメ
「そういや昨日は疲れててそのままだったから聞きそびれたけどお前の名前は?」
「特には無いなぁ……お前が決めてくれたら晴れて式神だから付けてくれよ。ああ、“カメ”ってのは無しな」
「えぇ……じゃあ……カメ……カメラ……タートル…………」
「クラクラってのはどう?昔ペットショップでリクガメをインドネシアの言葉でクラクラだよ!みたいなポップを見た覚えがあるんだよな」
「なるほどクラクラか……いや、言語が違うだけで“カメ”って言ってるのと変わらんやんけ!固有名詞くれっつってんのよ」
「えぇ………注文多いなぁ(ヽ´ω`)じゃ、クラムでどうよ。いずれお前を目の眩む様なゴージャスな大妖怪に押し上げてやるって願いを込めてさ」
「おお!クラムか、洋風だが聞きようによっては和風の響きもあるし悪くない。今日からワイは“クラム”やよろしくなコウタ!」
そんな名付けを兼ねた雑談をしながら歩き、ようやくコンビニに到着する。
店内には警察と陰陽師っぽい人と魔法使いっぽい人が居た。やだなぁ……めんどい
「すみません……店長、店は大丈夫でしたか?」
「アンタが昨日この店でゴーストに襲われたって店員さん?昨日どうやって帰ったの?正直に教えなさい」
俺は店長に話しかけたのに、横に居た魔法使いっぽい人がいきなり詰めてくる。あーいかにも「キャリア積んでます!意識高いです!」みたいな感じだなぁこの人(´・ω・`)嫌いじゃないがちょっとこういうタイプは苦手なのよね。
「あ、ハイ。普通にシバいて帰りました。」
「シバいて……?司馬懿……道教系の何らかの術かしら?」
「えぇ……司馬懿?じゃなくて、シバくの動詞でシバいたろか!とかあるじゃないですか」
「しばく……貴方はその力を何処「ゴホン!」
横に居た陰陽師の男性が咳払いをして魔法使いの女の追求を止めてくれた。
「えぇ、我々はこういう者でして……出来ればコウタさんには我々に協力して貰いたい限りでして」
そう言って男は懐から名刺を取り出して「私は角野セイジと申します。」と名乗る。こちらも小市民なので、「陰堂コウタです。よろしくお願いします。」と大人の対応を返すと魔法使いの女がやかましく突っかかって来た。
「私は協力してほしいなんて思って無いのよ!在野か野良か知らないけど、まだ検挙する理由の無いだけの犯罪者なんてどうして使おうとするのよセイジさん!コイツは直接ゴーストの発生には関わって無いと言う事はハッキリしてるんだから、通報して駆けつけた警官を襲ったゴーストを退けた手札さえ吐かせれば用済みでしょう!」
女は嫌悪感を隠さずにセリフを吐き捨てる。うわーお、なんか在野の術士くずれに恨みがあるとかなんやろなぁ……
「だから御守を握り込んだ拳で殴り倒しただけですって!店長、盛り塩と店に置いてた御札は黒くなってたでしょう?身の危険を感じて逃げたんですが、店を空けてしまってすみません」
借りてきたネコみたいになっていた店長は「いいよ、この場合は。それよりこの人たちの事情聴取に協力してあげてね」と言ってふたたび置き物と化した。コ……コイツ、顔に“話しかけないで下さい私も面倒臭いです”って書いてやがる……
「確かに神社仏閣で発行されている御守は守る効果がありますが、あくまで防壁として働くモノで攻撃には使えない事は常識ですよ。私を騙そうとしたって……いえ、そうですわね。その技を見せなさい!」
そう言ってコンビニの表に出る女魔法使い。俺は仕方無くついて行き駐車場で女と対峙する。
「セイジさん。自分は勝っても負けても犯罪者かと疑われたく無いのでちゃんと協力するつもりでいます。ですから彼女を怒らないで下さいね。よくわかりませんが、察するに何か事情があるんでしょう?」
と言うやいなや火球が飛んで来る。うわ合図無しかよ。まあ、事情があるんやろ?なんて気にしてるであろう本人の目の前で言って、遠回しに嫌味兼煽りを仕返しのつもりで差し込んだんだが………
効果抜牛ンだな(´・ω・`)
「私がイライラしてるのをまるで気にしない風なのがなおさらカンに触るのよ!貴方が素直に私は何らかの技術を持っていますごめんなさいって言えば今なら火の玉一発で済ませてあげようとしていたのに……丸焼きにしてあげるわ!」
次々と飛んで来る火球。咄嗟にコンビニ前にあるノボリの土台を掴んで火球を叩き落とす。
コンクリートだからあんまり高熱になると割れるし早く決着を付けるか
俺はノボリを女に投げつけると同時に距離を詰める。土台を盾にしてそのまま接近すると持っていた杖を叩き落とす。女は体術に切り替えてコンパクトな蹴りの体制に入ったので咄嗟に彼女に抱え付く。別にラッキースケベを狙ったんじゃなくて組み技なら単純に体重が重い方が有利だからねそれだけだよホントだよ
女の蹴りは足を伸ばし切れずに俺の脇腹を抜けていく。そのまま正面に向き合い抱き合う体制になる。背後に回っての羽交い締めって身体をナナメ方向に捻ると以外と簡単に抜けられるのよね。
「ちょっ………やめなさい!変態ですか貴方は!」
「バカじゃねぇのキャリアウーマン、ケンカに卑怯も何も無いだろ。痴漢目的ならそりゃあダメだけど、戦いの中で不可抗力的に胸や尻を触られて学生みたいな反応してたらそれこそ危ないだろ。アンタはツンケンしてる割にスレて無いのな。」
「キィァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
女が金切り声で叫びながら暴れ出すと背後に牛が現れる。牛?なに?使い魔かな?ちょっとやり過ぎじゃない?
とか思ってたら牛はこっちに突っ込んできた。マジかよ術者の女ごと?!
セイジさんが何やら術を展開し……横にジャンプ!
背中を牛の身体が掠めて行ってシャツの背中が破ける。皮膚も裂けてるなコレは。クソ牛がよぉ?
俺は気を失ってる女をセイジさんに渡すとノボリの土台をふたたび手に牛とにらみ合う。
2〜3度アスファルトを掻いてから突進してくる牛……
……っ!ここだっ!
牛とぶつかるギリギリで土台を牛の眉間に投げつけて横にジャンプ!が少しタイミングが遅れて足が突進に巻き込まれ跳ね飛ばされる!!
クッソいてぇ?!牛は?
上半身を捻って牛を見ると透けて行って消える所だった。
そして俺はセイジさんに連行?搬送?された(ヽ´ω`)
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