最終章 エピローグ

第60話  天変地異の後  

 天変地異は、人間、魔族共々に大打撃を与えた。

 小さな国は併合されて、新しい優秀な国王が誕生する国もでた。


 神殿はそれらを認める見返りに、税率を考えたり、予見師に国王に見合うだけの力量があるのか占わせたりと、忙しくて、てんてこ舞いである。


 中でも大打撃を受けたのは、魔族側でもともと数が減っていたのに、熱を帯びた雨のせいでアルゲイ族は、全滅したのである。


 魔王のディスティンは、南の地を治める神のイリアスに面会を求めてきた。

 そして懇願した。


『生き残った仲間は、三百人足らず……我らは、この大陸を捨て海に活路を見出す。ゆえに、止めてくれむか……』


 イリアスはこれを了承した。

 その月の末に南の半島から、三隻の船が出航していくのを魔法使いが確認している。


 大陸から魔族がいなくなったのだ。

 人間は、魔族がいなくなったと知ると狂喜した。長い歴史の中で、どれだけの人間が魔族の犠牲になっていたのか……。それが無くなるのだ。

 

 人々の生活が、もとの状態に戻るまでには、沢山の時間を要したが、神殿は、魔法使いを派遣してこれを手伝った。

 ゆっくりだったが、人々の生活も落ち着きを取り戻し、国々で祭がもよおされることが多かった。光の神を讃える祭りだ。


 祭は、ティルスイザークの棲むシェラナ山の麓のアルデバラン王国でも行われていた。

 ティルスイザークとエリサルデは、竜身でその祭を見学していた。

 ここに、風竜の巣があることは誰も知らないのだ。

 人間が登ってくることも、飛んでくることも不可能なようにエリサルデが改造してしまった。


 のんびりと、のんびりと月日は経っていった


 年月が経つうちに、翠もティルスイザークの名前にも馴れてゆき、エリサルデに習って、気配を小さくすることを覚えた。

 時には、二人で姉と弟に成りすまして、アルデバランの町を探索することもあった。

 この頃のエリサルデの外見は、もう育ての親のレフィニールに擬態していない。淡い金髪の緩いカールのかかった髪と、とび色の瞳をした、飛び切りの美人さんだ。

 翠の白金の髪の色とは、少し違っていた。


 翠は、早くエリサルデよりも大きくなりたくて、竜ならば必要のない人間の食べ物を人型になった時に食べて、もれなく、巣でお腹をこわしている。


『前から思ってたけど……』


『何?』


『あなた、馬鹿ね』


 初めて会った時から、エリサルデに頭が上がらないティルスイザークである。

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