第57話 トラは地球に帰り、ボクは…
『トラが……友達が目の前で斬られて……』
翠はポツリポツリと言い訳を言った。
『そなたは異世界渡りの転生者だそうだな』
中央にいた獅子の顔の創世神が翠に近寄ってきた。
『イグニス。そなたが、勝手に異世界の人間を我が世界に転生させていたのだな。前にも女の子を精霊に転生させて、直ぐに死なせてしまったというのに……懲りずに今度は竜族か……しかも、リザベータ(風の奥方)が同情して、精霊の力を分け与えておる。異世界渡りの者が、どんなに危険な存在であるかもを説明せずに、我らの世界に放り込むとは何事ぞ』
『……お兄様……言おうと思いましたわ……でもその前にラルカに蹴られて地上に……』
急に、神々の視線がラルカに向けられたので、パキュア創世神の足元でじゃれていたラルカは、イグニスに威嚇した。
『あの、ボクはどうなっても構いません!トラだけは地球に帰して下さい!』
『フム、どれ』
創世神は翠から、トラを浮かび上がらせて、手元まで寄越した。
『まだ、生きておるな』
『え!?』
『魔法剣で斬られて魔法が解けてしまったのじゃ、ビックリして仮死状態になっているだけのこと』
創世神は足元の雲上にトラを置くと呪文を唱えた。
だんだんと、雲に覆われて行くトラ。
「ぴゃーー!!」
『トラ?』
トラは、蘇生したら現状を理解して、今が別れの時だと悟ったようだ。
「翠君!! 今度はオレが、きっとお前の近くに行くからね!!」
全身が雲に覆われて、姿が消える寸前にアシュレイは、大声で言った。
『ヤレヤレ、あの者もこの世界に転生希望とはな……』
イリアスは、溜息をついた。
『わたくしは関わりませんわ。お兄様が、良きようになさって下さい』
イグニス女神の言葉に、イリアスは頷いた。
パキュア創世神は難しい顔をして翠の近くに来た。
『そなたの力任せの魔法で、この星の自転が数秒早まって、天変地異を起こしている。天界に我らが集まったのは、それをもとに戻すためじゃ。そなたも手伝ってくれるか?」
他の三柱の神も翠を見ている。
翠も、頷いた。
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