第56話  天界からの呼び出し

 翠は、怒りに任せて、使える限りの力を使った。

 その結果、南方では得体の知れない風と熱のこもった雨が降り、各地で地震が起こるという大陸最大の自然災害が起きてしまった。


『アシュレイ、ボクが早く帰してあげれば……ボクを庇うなんて馬鹿だよ』


 アシュレイは、身体を斬られたショックで元の猫の姿に戻っていた。


『こんな世界、滅びれば良いんだーー!!』


 翠が叫ぶと、一層雨が強くなって、地が揺れた。


 翠は人型のまま、あてもなく猫のアシュレイを抱いたまま宙を彷徨っていた。

 アシュレイは 、完全に息をしていなかった。


 斬られたのが、魔法剣だったためか? 不死身であるはずの召喚者が死ぬはずはないのだが……。


 やがて雲が裂けて、小さな生き物が翠の前に降りてきた。

 神獣のラルカである。


《日向翠、天界から呼び出しニャ? 分かってるニャ? 君の罪》


『友達を殺されたのに? 怒ったら駄目なのか?』


《世界を、こんなに混乱させるなんてやりすぎだニャ》


 ラルカは、長毛種の猫型の神獣だ。

 真っ白い毛には、汚れも無いように見える。


『でも!!』


《竜身も、もう取れない事に気付いてるニャか?》


 ラルカの言葉に、我に返った翠。

 竜の姿に、なろうと思ったがなれなかった。


 やがてラルカが言った。


《弁解は、神様たちの前でしたらいいニャ。天界に行くニャ》


 翠は、神獣のラルカに導かれて、天空に昇っていった。

 天空の上の上、雲の上に馬鹿でかい扉があった。


《天界への扉ニャ》


『……』


 翠は、アシュレイを死なせてしまったことで、口も利けなかった。


 うな垂れて扉をくぐると、中央に獅子の頭の神が、両端を銀色の髪の人間に良く似た男女の神が。とどめに一つ目の口の裂けた神までいた。

 彼らが神だと分かったのは、イグニス女神がいたからだ。


 世界の神が集合してるみたいだった。


『そなたが、異世界渡りの翠、ティルスイザークか?』


 中央にいた獅子の頭の神が翠に話しかけてきた。


『はい……』


『我は、創世神のパキュアである。我の創った世界をここまで壊してくれたな』


『でも……友達が……』


 やっとのことで翠は、それだけのことを言った。

 創世神は、相当怒っていた。

 銀色の男の神も、難しい顔をしていた。

 イグニス女神も困惑した顔をしていた。

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