第54話 翠が魔王!?
『余が魔王を名乗っているのは、一番力がある訳では無い。ただ、余が一番年寄りなだけのこと……まぁ、人間もこんな辺鄙なところまでやって来るのは稀なのだから、今までは良かった。しかし、予言の鏡が言ったのだ。「魔法剣を携えた、勇者が魔王を討ちに来る」とな……』
翠はビックリした。
『ティルスイザーク、しばしの間で良い。この椅子を守ってくれぬか?』
『えっと……ボクに人間の敵になれと?』
『いや、そうは言わぬ。竜族は、光の眷属だからな。しかしそなたは、我らの仲間の村を全滅させた。罪滅ぼしだと思ってもらいたい』
翠には、北の地方のことを言われている自覚はあった。
前ならば、怒りに震えて竜身になってしまうところだが、翠の心が、だんだん竜に近くなってゆき、人間のように激高することも無くなった。
『分かったよ……人間の勇者を追い払ったら、良いんでしょう?』
『良き返事だ』
ディスティンは、満足げであった。
「翠君!! 魔族の手先になるなんて」
『大丈夫!! 君を地球に帰したら、暮らす場所は決まっているから』
翠は、アシュレイに笑って答えた。
だが、アシュレイには悲しそうな笑顔にしか見えなかった。
『心配なのは君のことだよ。あんな形で銀の森を出てきただろう?エリシスに頼みづらくなってしまったよ』
「オレは、本当に良いんだって!! 翠君の側にいるよ」
「ありがとう……アシュレイ」
魔王たちは、少人数を残して拠点を変えるようだ。
オーキッドは残っていた。
『オーキッドさん、君はみんなと行かないの?』
銀髪のが映える、オーキッドが翠に言った。
『魔王様には、側近が必要でしょう?』
オーキッドは、悪びれもせずに言う。
▲▽▲
やがて、やって来た人間の軍団は、結構大きなもので本格的な魔族狩りにやって来たことが
翠は、魔王の玉座に座り、人間たちの会話を盗み聞きした。
今回の遠征は、16年前に勇者、グレイン・エドナが頼んだ魔法剣を今はロイル家の警備騎士になったはずのサックス・エボーリーが形見として譲り受けてのことが発端であったらしい。
『魔法剣てたしか……火竜の息吹で作るというアレ?』
「翠君、やっぱり、魔族の味方になるのは駄目だよ」
アシュレイは、心配そうに翠のことを案じてくれた。
『ありがとう……アシュレイ。君にはやっぱり癒されるよ』
「オレを猫だと思わないでよ~!!」
と、怒ったところで、キジトラの猫耳が出現した。
近くにいたオーキッドはビックリである。
『あら、変な気配だと思ったら、獣人族の子だったの?』
「違うもん! 違うもん!!」
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