第六章 魔王、翠

第51話  オーキッドと再会

 暗闇に目が慣れてくると、金色の瞳の女の全容が分かってきた。


『君……魔族のオーキッドだね? 何か僕に用なの?ここは、光の領域だとおもうけど?』


《夢は我らの闇の神、『ディハルド様』の領分なのよ。それに、何の用じゃないわ。『ディッセイの剣』のことを忘れているわね?》


『ディッセイの剣』とは、翠が魔族から借りてきた魔法使いと精霊の契約を切る道具だ。


《あれは、魔王様があなたに貸したものよ。用が済んだのなら返しなさい!!》


 オーキッドは、人間臭く腰に手を当てて怒っている。

 翠は、自分がオーッキッドの仲間の村を全滅させたことを後ろめたく思った。


『人間にくれても良いじゃん?』


《何故、わざわざ、人間の肩を持つの? 心臓を取られてやっとの思いで南まで来たくせに……》


『あの時は、魔法使いたちのおさがやたらに魔法使いが見習いの子を精霊と契約させてたんだ。まだ生まれたての精霊まで、どんどんね。それで、魔族が増えたって戦争してたんだ。精霊の数を減らした方が早いってなるでしょ?』


《その話は、前にも聞いたと思うし、今は『ディッセイの剣』のことよ

 10日以内に、あなたが剣を返却しに来てちょうだい。他の誰でも駄目よ。魔王様は、あなたを信頼して剣を渡したのよ。責任は取ってもらうわ》


 オーッキッドの姿は消えて行った。

 改めて、翠は目覚めたら、朝になっていた。


『う~~ん、剣は没収されたんだよな~~』


 そこへ、翠の部屋の扉が開き。アシュレイが入って来た。


「おはよう!! 翠君!! 今日は遅いね? 変な夢でも見た?」


 元気よく入ってくるアシュレイに、トラのことが重なる。

(いや、同一猫だし……)一人突っ込みを入れて笑う翠。


 ニヤニヤ笑ってる翠を見て、不思議そうにアシュレイは言った。


「どうしたの?」


『いや、トラは地球に帰ったら、どんな名前になるのかなっ?てさ』


「オレの名前はトラだよ。それ以外ないモン!」


『嬉しいけど、誰かに保護されたら新しい名前を貰うんだよ』


「オレ、一生野良で良い!!」


 アシュレイは本気だった。

 翠は思わず『トラ』と声をかけそうになって、飲み込んだ。

 この話はここまでだ。


『それより、アシュレイ。『ディッセイの剣』が何処にあるか知ってる?』


 アシュレイはキョトンとした。


「翠君が、魔族からもらってきた精霊との契約を切る剣のこと?」


『それそれ』


「多分、光の神殿じゃないかなぁ?魔族の所有物だったから、神剣の間で浄化の必要があるんだって、前に神官が言ってた様な気がする……」


『えーー!! 光の神殿!?黙って渡してくれそうもないよなぁ……』


「翠君、あの剣が欲しいの?」


『魔族側から、返還要求が来てるんだ』


「無視しちゃえば?」


 アシュレイの言葉に翠は、申し訳なさそうに言った。


『ボクは、彼らの仲間の村を、いとも簡単に全滅させたんだよ。彼らには心で会話ができる能力もあると言っていた。だから、知ってると思うんだ。北での僕の所業を……』 


「それでも、翠君に来て欲しいということは……。何か翠君に用があるってことだね?」


『だと思うよ』

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