第49話  お迎え

 二人で呆然としていたら、白金の翼を持つ風竜が二人の前に飛んで来た。


「翠君だ!!」


「綺麗な竜だなぁ……」


 翠は、二人の前で人型に戻った。

 ニックは、初めて見るので驚きである。


「ひえっ!!」


「ニックさん、翠君は仲間だよ?」


「仲間じゃねぇだろ!! 人間じゃないんだぞ!!」


 人型になった翠が言う。


『でも、ボクたち友達だよ?』


 翠は、アシュレイとニックに言った。


『迎えに来たよ、登りはなんとか行けるけど、帰りはアシュレイにもきついと思ってね』


「わ~~ 信じられてないなぁ……ロイルの長の指示なの?」


『ボクの独断!』


 アシュレイは首を傾げた。

 他に、アシュレイのことを助けてくれる人なんて思い浮かばなかった。


『ニックさん、ここにディン族はいませんよ。昨日は御免なさい。ニックさんの首にチョップしたのはボクです』


 翠は、素直に謝った。


「お前が!? なんで!! オレを気絶させるんだ!!」


『その前に、何か見ませんでしたか?』


 翠の問いに、ニックは頭を捻った。


「見たような気もするが……何も思い出せないな」


『そりゃ、よかった』


 翠は、ホッと胸をなでおろした。


 アシュレイのキジトラの尻尾の件は覚えていないようだ。


 取り合えず二人を乗せて、翠は銀の森へ帰ることにした。

 本当は二匹で来たのだが、はシェラナ山の魔族の巣跡気になって、一晩で、人間が登って来れない逆三角形の山に形を変えて、風の精霊に山の守護を託した。


 この山は、招かれた者しか入れぬ山になったのだ。



「翠君、これからどうするの?」


『アシュレイの側にいるよ。少なくとも君がちゃんと地球に帰る時まで見守りたいと思ってる』


「翠君!!オレ……ちっとも勇者らしくなくて、迷惑ばっかりかけてるけど……戻れなくても良いよ……。戻ったら猫だし、何よりあの世界にお前はいないもん」


『それでも、その姿は仮のものだ。エリサも言っていた。普通、勇者召喚された勇者は、戦いが終われば、すぐに帰すのが習わしだそうだよ。長の交代の時に、君は帰るべきだった。地球では赤ちゃんなんだぞ。ちゃんと長生きをしろよ』


 翠の手が、少年のアシュレイの頭の上に置かれた。


「勇者が猫!?」


 ニックは、二人の会話の意味が分からなくて、(??)と一人で頭を捻っていた。

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