第48話  魔族の巣は……

 驚いたことに、魔族の巣は何処も、綺麗に浄化までしてあった。

 戦いの後に清められ、そこには、痕跡もかった。


 ただのこぎれいな廃墟である。

 一番、壮麗な建物に入っていった。


 アシュレイもニックも、ディン族の存在を疑っていたので、二人で寄り添うように進んで行った。

 中央の扉を開けると、大きなな石の像が立っていた。良く見ると、部屋のあちこちに転がっていた。

 この部屋も浄化の火で清めてあるものの、この石像たちは、邪眼族の犠牲になったものたちに違いない。

 そんな危険な魔族も、千年昔にはいたのだ。


 良く見ると、石になった者の中には、人間ばかりではなく、同じ魔族と思えるものもいた。

 目を見たら、石になってしまうと伝わる邪眼族だ。

 一番奥の椅子の下に、石になった背の小さな大きな目の魔族がいた。


「これが多分、邪眼族だ……」


「でもどうして? 自分が石になってるの?」


「それは俺にも分からんな。でも、伝えられてる人相画と同じ特徴を持ってるぜ。三つ目とか、鱗のある皮膚とか……。過去に上級の魔法使いが、ここを清めたのだろう……そうなると、気になるのは、昨日の二匹のディン族だ」


 アシュレイは「??」である。

 ニックは、何故か怯えているように見えた。

 王の間らしいところに上質な鏡があった。

 そこで、自分の容姿を舐めまわす様に見ているのだ。

 その上で、アシュレイにも、「俺はこんなところにシワなんて無かったよな!?」と真剣な顔で聞いて来た。


 アシュレイには、昨日と全く同じ顔であるとしか見えないのだが……。


「こうなりゃ、二匹のディン族を殺すまで帰れないぜ!!」


 ニックが、高らかに宣言をした。


 魔族に威嚇したのだ。


 その途端、強風が吹いて二人は転がって、登って来た岩場まで戻されてしまった。

 顔色が変わったのは、ニックよりもアシュレイの方が先だった。

 足場にした崖が全部無くなっていたのだ。ところどころにあった岩場さえ無くなっていた。

 シェラナ山は文字通り、絶壁の山へと変貌したのである。


「この短時間で?」


「人間じゃないな……」


 アシュレイとニックは、顔を見合わせた。

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