第46話  猫のアシュレイ

 シェラナ山の山の麓まで来て、ニックとアシュレイは呆然としてしまった。

 シェラナ山は、断崖絶壁の山であったのである。


「仕方がない!! 登るか!!」


 ニックは、マジカルボックスから布を取り出して切り裂き、袖口や、ズボンに巻き付けた。少しでも楽に崖を登る工夫だ。

 それから、太目の縄を取り出して、アシュレイをおんぶしようと辺りを見回すと、彼は、もう崖に足をかけて登る準備をしていた。


「ニックさん。オレなら大丈夫ですよ?このくらいの崖」


「でも落ちたら、痛いぞ」


 アシュレイは猫なので、俊敏性があるのだ。

 身軽で、このくらいの崖なら上に行ける自信があった。


 アシュレイは、皮の鎧を脱いで身軽になると裸足になって、山を登り始めた。

 突き出た崖を見つけては、ぴょんぴょんと跳ねて行く身軽さにニックは、人間とは思えなかった。


 もう少しで頂上まで、着くと言うところでいきなり突風が吹いた。

 山頂は、かなり風が強い。


 アシュレイは、「ととと……」バランスを崩して地上に落ちるのかと思ったところで、後ろから誰かに押された気がした。

 転んだが、山頂に辿り着くことが出来たのである。

 ニックが登り切るまで、まだ時間はありそうだった。


 この間に、アシュレイは、魔族の巣跡を偵察することにした。


 幾つかの崩壊した建物の残骸。山頂のすべてが巣になっていたようだ。

 東側には、大きな生き物を飼っていた形跡もあった。

 それが何であるか、アシュレイには分からなかった。


「ここにも、かつて竜がいたんだな」


 ニックがやっと、追いついたのだ。

 肩で息をしており、身体は汗まみれだった。


「竜が、魔族の味方をしてたというの?」


「大方、心臓を取られて仕方なく……だろうよ」


 ニックは、今度こそ「自分から離れるな」と警告をしてきた。そして建物内を巡回することに決めたようだ。





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