第45話  もと魔族の巣 シェラナ山

「西域のシェラナ山て、何処にあるの?」


 皮の鎧を少年バージョンにして、装備したアシュレイは、 馬でニックと陸路を西へと行くことになった。


 罰なので、魔法使いは手助けはしないということだ。


「古王国の、一つヴァーレン皇国の隣国に、千年前に一人の英雄と魔法使いが現われて、シェラナ山の魔族のをせん滅させて、そこに国を創ったんだ」


「じゃあ、今はアルデバラン王国の近く?」


「そうだな……アルデバラン王国の東の国境側にある山だ」


 ニックは、アシュレイのパンツの履き替えのために、たまに馬を止めてくれた。


「追い風が手助けしてくれている。馬の進みが早いから早くつけそうだぜ」


「うん!!」


 ニックは、この可愛らしい少年が不死身の召喚者だとは信じられなかった。しかし、水を飲むことと眠ること以外は食べ物が欲しいと言わなかった。とにかくよく眠る少年だった。馬の上でも眠っている。縄で括っとかないと落馬しかねない。


「アシュレイ勇者は、何処から来たのだ?」


 ニック・カールトンは、興味を持って聞いてみた。

 彼自身、冒険者ギルドから依頼を受けて、先の魔族討伐の仕事を請け負ったのだ。

 しかし、先代長の戦い方に疑問を持って、魔法使いのテントに潜り込んでいた。


 戦闘は、人間側の方が劣勢であった。この状況を打破するために勇者召喚が行われたらしい。

 さすがのニックでも、勇者召喚には立ち会うことは出来なかった。

 そんな折に風竜の翠が現れ、翠が姿を消したと思ったら、銀色の光にニックも包まれて、気が付いたら、彼らの故郷の銀の森とやらに来ていた。

 そこでエリシスから、神殿所属の騎士になって欲しいと頼まれたのだ。

 冒険者ランクAランクのニックには、神殿所属の方が、報酬が良かったので、二つ返事で引き受けた。


「地球って言うところだよ。でも、オレは勇者じゃないから」


「召喚者は、誰でも勇者さ。シードックを建国した者も召喚者だったという説があるくらいなんだ」


「魔族をやっつけて、国まで創るなんてすごいねぇ」


「そうだな。早く帰って、父さんや母さんに会いたいだろうなぁ……」


 アシュレイは地球では、親とはぐれた野良猫なので何も言えなかった。

 寝たふりをしてやり過ごすことにした。


(こんなに別れてたのは初めてだ……)


 アシュレイは、寂しさを感じていた。

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