第43話  冒険者対エリサルデ

「竜の卵は入っていなかったというのか!!?」


「だから、そう言ってます!そんなマジカルボックスを捨てないでいた私の父に感謝して欲しいですわ」


シレッとエリサルデは、冒険者に言った。


「今、あなたのお父様立会いの下にお家の調査がされています。

隠し事は出来ませんよ。もう竜の卵は売ったのですか?」


エリシスもエリサルデと屈強の冒険者、サックス・エボーリーの会話に飛び込んできた。

サックスは、筋肉もりもりの身体で、何度も死地を乗り越えてきたことが分かる戦士だ。

15年も王国で、警備騎士として長期契約をしたというのも分かる。


「あの卵は、風竜の巣まで行って盗ってきた貴重なものなんだ!!返してくれ!!」


「だから、私は知りません! 本当に勇者様が、お持ちになって家へ来たのかも……勇者様は、魔法剣を作るところが見たいとおっしゃって、火竜を怒らせたと聞いてます」


「では、グレインは……?」


「勇者のグレイン・エドナ様は、消滅されました。父の話によれば、面白がって、火竜にチョッカイをかけていたそうなので」


「グレインは、西域でもう卵を売った後だったのか?」


その後のことは、エリシスが古い資料を持って来て言った。


「グレイン・エドナ殿は、16年前の三月に光の神殿に現れて、魔法剣が欲しいと三賢人に申し出ています。その時にかなり大金を持っておられたとか? 残念ですが、サックス殿。卵は、グレイン勇者殿が現金に替えられたと思った方が良いかと思います」


エリシスの言葉にサックスは、膝から崩れ落ちた。


「やっと、遊んで暮らせると思ったのに……」


「引退なんて早いですわ。おじ様」


エリサルデのニッコリ笑顔に何故かポッとなるサックスである。


「何なら、ロイル家の警備騎士をお願いしたいですね」


「本当か!?西域はもう、嫌だったのだ。食事も口に合わなくてなぁ」


エリシスの申し出を快く引き受けた、もと冒険者Sランクのサックス・エボーリーであった。

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