第42話 銀の森
『……で、エリサルデは何処の生まれなの?』
「さぁ?親から受け取ったのは、名前だけよ。冒険者に卵を盗まれたのよ。その後にマジカルボックスに入れられたの。ここが問題!マジカルボックスの時間を止める機能が壊れてたの。それで、卵が孵ってしまったのよ」
『良く心臓を取られずにいるね』
「火竜を相手に仕事をしてる父様ですもの。でも感謝してるわ。そのおかげで私は、自由に生きてるもの。だけど竜身を取ったことも無いし、母様でさえ自分の娘だと思ってるわ。村人とも滅多に会わない。周囲の人を騙しているのは心が痛いわ」
『君が、レフさんに似てるのは……』
「育ての親に擬態してるだけよ」
卵の頃に冒険者に巣から盗れて、人間界に紛れ込んでしまったのだ。
なにより、保身のための擬態とはいえ、自分にソックリになっていくエリサルデをレフィニール自身が手放したくなかった。
妻のアリシアには、暗示をかけて自分たちの子であることにした。
聖地、銀の森に勤める魔法使いレフィニール妻のアリシアは、エリサルデの愛らしさに、メロメロになって自分の子であると信じて疑わなかった。
「でも、勇者の相棒が今になって現れて、マジックボックスの返還を求めて来たの」
『え~~!? その相棒は、風竜の卵のことを知ってたの?』
「いっしょに取りに行った仲ですって!」
『16年も何で、忘れてるんだ」
「知らなかったのよ。死んだ勇者と別れてから、15年の契約を提示されて、西域のある国に、大金で雇われてたんですって。それこそ、竜の卵が売れるくらいの金額で。それで冒険者は、勇者に契約が切れたら、竜の卵の料金の半額を受け取ることを約束していたらしいの。でも勇者は、死んでいた。死んだことを知ったのが、生前に勇者が魔法で鍛えた剣が欲しいと言っていたのを思い出したからで、銀の森に問い合わせたからよ」
翠は、呆気にとられた。
「それで光の一族のところに呼び出しが来たわ」
エリサルデは、肩を落としていた。
(嫌なんだろうなぁ)
『人間で、通せば良いんじゃない? エリサは、気配も人間なんだから』
「レトア語も達者になったわね」
『そう?へへへ……』
アシュレイは、複雑な顔で翠を見つめていた。
▲▽▲
『新しい、ロイルの長って、エリシス!!?』
人型の翠の声が銀色のリドムの葉が輝く森中に響き渡った。
「声が大きいですよ、翠殿。でもどうして、エリサルデ・フレイドル嬢の呼び出しにあなたがいっしょなのです?」
「えっと、彼女は一流の魔法使いだし……アシュレイの姿を魔法で直してくれたんだ」
「そうですか。まぁ、こちらはあなたの予想通りの交代劇です。エスター様に子供がいなかったので、次に血の濃いワタシにお鉢が回って来たんです。エリサルデ嬢、マジカルボックスの引き渡しはこちらでします。中身を見ましたか?」
「さぁ?マジカルボックスの存在自体知らなかったんだもの」
エリサルデはシラを切る気でいる。
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