第39話 風竜の巣へ帰還
翠は、何処も寄り道をせずに真っすぐに、風竜の巣へ帰還した。
アシュレイの魔法が解けかかっていたこともある。
今のアシュレイは、魔族たちに魔法を吸い取られて、キジトラ色の猫耳と尻尾が出ていた。
「翠君、俺こんな姿嫌だよ~~」
「少し、我慢しろよ。エリサにまた直してもらうから」
「う……うん……」
飛ぶことにすっかり慣れた翠は、竜族としての能力を目覚めさせつつあった。
今回は、迷いなく風竜の巣へと着くことが出来たのである。
ところが翠を待っていたのは、仲間たちからの冷たい視線であった。
『遅かったな? 往復で二日もあれば行ってこれる距離なのに。もう、五日は経っているぞ!! どうすれば、こんなに時間が掛かるんだ!?』
若い竜のリーダーのセルティスはカンカンだ。
『水竜さんを怒らせちゃって……竜巻で飛ばされて……また迷子になって……魔族の村に行きついて……燃やして脱出して帰って来たんだ』
最後に翠は、竜の舌を出してペロリと笑って見せた。
『期限が過ぎてるからな。そなたをここへ置いておくことは出来ない』
『え~~ だって、水竜さんは自分が神だと言い張って教えてくれなかったんだ』
『自分から名乗って、正式な挨拶をしたのか?』
『正式な挨拶?』
翠には、初めての言葉である。
『今生では二度とつらをおがむことは無いから、同じ風竜として最後の情けで教えておいてやる』
『二度とつらを見ることは無いって言っても、ボクはここで暮らしたいんだけど』
『長が許さない。お前はこの巣を分裂させてしまうだろう……とな』
『ボクは、そんなことしないのに!!』
竜の翠は泣きながら言った。
『せっかく、竜族に生まれ変わったんだもん。人間や魔族は仲間じゃないんだ。仲間といっしょにいたいよ!!」
セルティスは、下を向いて大きく息をついた。
『お前は、異世界の転生者で、この世界の卵で生まれた訳でも無い。
そんな奴は、馬鹿強い力を持ってるんだ。今後、俺に従わない奴は、そなたを担ぐだろう。そんな馬鹿な争いに巻き込まれたいか? それでも、この巣に残りたければ、俺と決闘だ。どちらかが倒れるまで……な』
翠は、涙でセルティスの顔が見えなかった。
『ティルスイザーク、
竜の長に名前をもらえた。でも会うことも叶わぬのだ。
風竜の長が、翠を仲間と認めなかったのである。
『ボクは、何処に行けば良いんですか?』
『外で、家族と暮らしている竜族もいる。人間のフリをしている奴もな』
「え……」
翠は、真っ先にある女の子のことが浮かんできた。
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