第32話 翠の初体験
なんでこんなことになったのか……? 翠は頭を抱えている。
相棒のアシュレイと、大きな湖のある村に着いたのは昨晩だった。
あまり、人の出入りのない、テルヌという村だったが、ここは水竜を祀る風習があるらしく、翠とアシュレイの二人は、湖の中ほどにあるフローネル島という島に連れて来られた。
表向きは歓待されているように見えたが、人々の目が笑っていないことは、臆病で慎重なアシュレイには分かっていた。
昨日の夜は、翠も一緒だったはずなのに……
翠は、あれほど人間界の飲み物には口をつけないと言いながら、誘われるままに酒を飲み、それからの記憶が曖昧だった。
なんか、気持ちのいい夢を見ていた気もするが……。
寝床の傍らに水らしきものが置いてあったので、それに手を伸ばそうして気が付いた。
自分がスッポンポンなことに!!
そして、寝床の中には、半裸の女性が??
翠には、この状態の意味が分からなかった。
酒なんて物は、生れて初めて飲んだのである。軽い頭痛がした。
昨日は、歓迎の宴だったはずだが、出された酒はそんなに強いかったのだろうか? 翠は心臓が取られたのかと思って、心配したがそんな喪失感も体の怠さも無かった。
酔い潰れて、女人を当てがわられたのだろうか?
しばらくすると、寝床の女性が目を覚ました。
黒髪と漆黒の瞳が印象的な、人である。年は翠よりは年上だろう。
豊満な胸は、翠のタイプのどストライクである。(内緒)
「おはようございます。」
「あ……あの、おはよう……あのさ、君は誰で僕の友人は何処にいるの?」
翠は、少しまくし立てて言った。
女性は、おっとりとした性格らしく、乱れた衣類を丁寧に整え、髪も整えてから、
「昨晩、お客様にお情けを頂いたフェロウと申します」
フェロウと名乗った女性は寝床から起き上がると、深々と頭を下げた。
「お情け? 頂く?」
「私が次の贄でありますので、色々な人のお情けを頂いております」
フェロウは笑いながら、言ったがその笑みは何処か寂しそうだった。
翠は、理解が出来なかった。
「翠様と言われましたか? イチモツもご立派で、壊れると思いましたわ」
(ナニガ?ボクニナニガオコッタノ?)
翠は、完全に固まってしまった。
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