第31話 大山脈の北側の国
翠は思い切って上昇してアシュレイも一生懸命に翠にしがみついて、大山脈を越えた。
山がだいぶ下の方に見えたので、高さに余裕はあったようである。
下降して来ると、大きな湖が前方に見えてきた。
(あれのことか?簡単じゃないか……)
翠は、楽勝、楽勝と鼻歌が出て来てしまった。
そんな翠をアシュレイが諫める。
「翠君、風竜が出したクエストが簡単なんておかしいよ。何か裏があると思った方が良いよ」
「アシュレイこそ、慎重だな~~きっと挨拶すれば、教えてくれるって」
アシュレイは、嫌な予感がして背中がゾワゾワしていた。
「風竜同士の仲間なんだし~~」
「翠君は、優しすぎるんだよ。そんなところが竜には向かないんだ」
「えっ?何」
機嫌良く飛んでいた翠には、アシュレイのボソッと言った言葉は聞こえていなかった。
▲▽▲
やがて湖の側に来て、そこに村があることを知る。
取り合えず翠は、人型になった。
「フゥ……人型になるのも久しぶりだな……」
「翠君、前と髪の色が変わってるよ」
「へ?」
翠は、湖に顔を映してみた。
日本人の黒髪のはずが、薄くなっていた。水なのではっきりとした色は分からないが、エリサルデのような薄い色に変わっていたのだ。
「もともと風竜って、淡い金髪か銀髪が多いって聞いたよ。オレ」
「ボクがこの世界に馴染んできた証拠かな?」
翠は、これで仲間にしてくれる要素が増えたと喜んで、深くは考えなかった。
「それより、村の人に水竜のことを聞いてみようよ」
「そうだね」
翠の提案に、小さなアシュレイも同意する。
ふたりは、手を繋いで村の中へ入っていった。
途端に好奇な目で見られることになったのだ。
まず、着ていたものが大山脈の南側と大きく違い、日本の江戸時代の農民のような格好をしていたのだ。
しかも、キジトラのアシュレイの髪はともかく、色の落ちてしまった翠の髪の色は周囲の人間と完全に浮きまくってしまった。
「怪しい者じゃありません。この湖に棲んでるという水竜の名前が知りたいだけです」
見たことも無いような髪の色をした人間が現われたのである。
村中の人が、わらわらと出て来た。
「水神様に何の用じゃ?」
言葉が通じたことに翠は喜んで、つい本当のことを話してしまった。
「翠君!!」
アシュレイが止めた時には遅かった。
翠は、自分が風竜であること、仲間に認めてもらうために、ここの水竜の名前を教えてもらいに来たことをベラベラと喋ってしまった。
余計に疑念が募る村人の表情を見て、アシュレイはまたチビってしまった。
「翠君……自分が竜だという自覚が無さすぎ……」
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