第四章 大山脈の北側

第30話 番外編  パンツの履き替え  

 大山脈を飛び越える前に、アシュレイの身を清める必要があった。


 風の奥方が火や水の魔法もくれたおかげで、翠は外にいてもシャワーを浴びることが出来た。

 エリサルデが、香りの良い石鹸を持たせてくれたので、アシュレイのオシッコの匂いを取ることが出来たし、アシュレイの三枚重ねのパンツの洗濯にも用いることが出来た。


 何故、彼女がここまで用意してくれたのかは、今はまだ知る由もない。

 ただ素直な翠は、エリサルデの親切に感謝した。


「本当に、アシュレイの(自主規制)が無くなている~」


 二人で裸になりながら、温水の雨を降らせて翠は、アシュレイの身体を洗って言った。


 その言葉に深く傷ついて、涙目になるアシュレイ。


「オレだって、嫌だい!!」


「でも、地球に帰ればどうせ、去勢されるんだし、そう思えば予行練習だよ」


「なに!?それ!!」


 いきなり、キジトラ色の髪が逆立って、瞳が金色に変わった。

 猫の本性が表に出てしまったようだ。


 翠は悟った。アシュレイに去勢の話は禁句であると……。

 アシュレイは、猫ながら男であるというプライドを持ち合わせている。


「君は、なかなか男らしいんだね」


「翠君ほど、勇敢でお人好しじゃないよ」


 二人は、もう十年来の友達のように、肩を抱き合い眠った。


 二人の寝床のそばには、洗い立ての分厚い三枚のパンツがはためいていた。

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