第27話 可愛い男の子、アシュレイ
「リューデュールさんは、仲間が恋しくないの?」
翠は、リューデュールの問いかけた。
『火竜は風竜と違って、群れで生活はせぬ。風竜の巣はここよりもっと、北西の大山脈の麓じゃ』
「どうして知ってるの?」
『ここにも、色々な精霊が出入りする。ここに来るのは、人間だけではない』
精霊は光の眷属で、竜も同じだと前にエリシスが言っていた気がした。
「うん、分かったよ。有難う、リューデュールさん」
翠は、レフィニールのもとまで戻ると、人型になった。
「レフィニールさん、僕たち今夜中に出発します」
「それが良いな。明日には女房が帰って来る」
翠とレフィニールは、急いで家に戻ると、トラのギャン泣きの声がした。
「トラ!?どうしたんだよ?」
トラは、翠の顔を見るなり、さらに大きな声で泣きだした。
「お姉さんがひどいんだ~~ オレの身体をこんなに小さくしたよ~~」
「ま~ ひどい!! 無理な魔法で人型になってたのを、整えただけじゃないの~!! 子猫のあなたには、あの身体は負担になってたわ。だから、長くは持たなかったと思うわ」
トラは、七歳くらいの少年の姿になっており、服も着替えさせられていた。
エリサルデの魔法は、光の一族と同レベルほど強いみたいだ。
「でも、オレの(自主規制)を取ったり……」
「それは無い方が有難いよ」
「翠君!!」
トラは泣き続けていた。
「アレがない分だけでも、面積が浮いて前よりもが可愛くなったでしょう?」
「そうだね」
キジトラ色のショートの髪、深い青い色のくっきり二重の目。
女の子のような男の子だ。
「一応、水分はとった方が良いから水筒と、私の昔の服が鞄に入ってるわ。それから、三重のパンツでも漏れるなら、オムツもしていきなさいな。残りの魔力で風の守護を付けたから、もう竜の背中でも寒くないはずよ」
トラは、オムツと言われてまた泣きだした。
「トラ……風竜の巣へ行くまでの我慢だよ」
「風竜さん、名前も出来るだけ、ここでの名前を呼んであげて。
彼が猫であることを思い出すことがないように」
「でも、酷い意味だったよ。支配される者だとか……」
エリサルデは、一瞬、ポカンとした顔をしたが、直ぐに笑顔で答えた。
「アシュレイ? レトア語は、逆の意味も持つこともあるわ。つまり支配する者と言う意味でもあるの。強い名前を付けてもらってるじゃない」
「名前負けしてない?」
「??」
エリサルデは首を傾げた。この世界に名前負けの概念が無いようだ。
翠はトラのことをアシュレイと呼ぶことにして、エリサルデとレフィニールにお礼を言って、夜の内に大山脈の麓に向けて旅立っていった。
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