第三章 トラとの旅 風竜の巣へ

第21話  オレ、トラだよ!!

「アシュレイ……?」


 急にアシュレイが声を荒げたので、翠はビックリした。


「翠君、僕はトラだよ!!ほら、この頭でわかるでしょう?」


 アシュレイは、頭を指差して大声で言った。


「ちょっと待ってよ。いきなり言われても……とにかくここを離れよう

 怖いかもしれないけど、ボクの背中に乗って!!」


 翠は、人間を乗せて飛行するのは初めてであったが、アシュレイの重さは少しも感じなかった。


 風の奥方の力の一つに姿を隠すというモノがあった。

 ちょうど良い。

 翠のような大きな竜が姿を消したとなれば、大事おおごとになる。その前にトンズラだ。


 上空に舞い上がると、地上が銀色の光が煌めいていた。

(天界の色に似ている?)


「あ~~あ!! とうとう、本物の神様が乗り込んできちゃったみたいだ」


「知ってるのか? この世界の神のことを」


「毎日、銀髪一族の連中といれば少しはね。今の長は、神に反抗ばかりしいたんだ」


 野営地は、銀色に広範囲でパァッと光り、一瞬のうちに何も無くなってしまった。


「危なかったな~~ 少し遅かったら、ボクたちもあの光に巻き込まれてよ」


「うん、翠君。良かったね。これから何処に向かうの?」


「北だよ。ティエリ山脈の風竜の巣さ。仲間に入れてもらおうと思って」


「オレも行って良い?」


「君は、地球に戻って生きろよ。帰れるんだろ?」


 アシュレイの声が小声に変わった。


「でも……オレは人間でもないし……」


「え!!?」


 さっきのの「トラ」発言といい、アシュレイは何かを隠している……翠はそう確信した。

 そして適当な、人気のないところで人型に戻り、アシュレイの話を整理することにした。


 焚火を囲んで向かい合う二人。


「君は、人間だろ?」


 翠の質問に、思い切り頭を振るアシュレイ・ロット。


「オレは、地球ではキジトラの子猫だった。名前はお前が付けてくれたんだ。トラって」


 嬉しそうに、はにかみながら言う、アシュレイ。


「本来の召喚対象者は、お前だよ。翠君」


「なんでそーなる~~??」


 翠は、トラとの再会が嬉しかったが、また疑問が出来てしまった。



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