第18話  翠の大暴れ

『ディッセイの剣』を手に入れた翠は、魔王と会うことも考えたが、翠は竜族である。本来は、干渉などしないのだ。

 翠の求めの応じて、『ディッセイの剣』を貸してくれただけでも良しとしよう……翠は思った。


 思ったよりも、風の奥方の力が 取られた心臓の代わりをしてくれていた。おまけに、大地と水と火の力まで手に入れてしまったようだ。


 黙り込んだオーキッドに別れを告げると、翠は竜身になって、元の魔法使いの野営地に飛んで行った。


 野営地に着くなり、翠は人型に戻り『ディッセイの剣』を抜いて、野営地の魔法使いを追いかけまわした。


 まず初めは、小さな子供からで、ほんの生まれたての精霊が無理やり幼子と契約させられていた。


 魔法使いと、契約している精霊は細い銀色の線で繋がっている。

 それをぶった切れば、契約が切れることが出来るということは、この世界に疎い翠の竜の目から見たら簡単に察することが出来た。


 生まれたての精霊は、翠に、<ありがとう> と、礼を言って消えていった。


「翠殿!! 気が狂ったのですか!?」


 エリシスが、大声で翠の近くに寄って来た。


「おら~~!! 君も風の奥方との契約を切って欲しいかい!?」


 翠は、羽をを出して野営地にいた魔法使いと精霊の契約を切っていったのである。


<翠様、もうよろしいですわ。これ以上魔法使いが減りますと、今度は、人間の世界の秩序が守れなくなります>


 翠の頭の中に、風の奥方の声が聞こえてきた。


「この世界では、魔法使いが世界を治めてるのかい? 王様とかじゃないんだ。変なの」


<王もいますわ。でも、世界の秩序を決めているのは、銀の森の魔法使いなのです>


「ふーん……で?  エリシスと契約は続けるんですか?」


 竜の翠は、呼吸一つ乱してなかった。


 エリシスと対峙した。

 エリシスは、顔色を変えていた。


 大人の魔法使いには、心臓の取り上げてある翠がマラ山まで行って、

 魔族の持ち物である『ディッセイの剣』を振り回していることの方が信じられないのだ。


 翠が風の奥方を見ると、奥方は、首を振っていた。

 エリシスとの契約を切る気は無いらしい。


 翠は、『ディッセイの剣』をエリシスの前に投げて投降した。


 元のテントに、監視付きで連れて行かれた。

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