第14話  魔族との戦い(3)

「ヤッパリ、心臓を返してくれよ!!」


「なにを言っているのですか? 今更でしょう? あなたは、この地で生きていくのでしょう? 少しだけ、我々に協力をしてくれても良いではないですか」


 アルゲイ族を追い払っても、魔法使いたちがエリシスを見る目は冷たかった。

 汗を流してテントに戻って来た所を人型に戻った翠は、待ち伏せをして言ったが、エリシスは、銀色の髪を決して縦には揺らさなかった。


「分かったんだ。心臓を取られると、力も持っていかれるんだと。力も無くなんてボクには耐えられないよ!! 魔族が増えたのは、精霊と契約する魔法使いが増えたからじゃん! 今からでも、この野営地にいる下っ端の精霊を自由にしろよ!! そうすれば、下位の精霊は、自然にかえるだろう……ボクはそう思うよ」


 翠は断言した。


「魔法使いの一族が、精霊と契約して何が悪いのです?」


「だ・か・ら!! 論点はそこじゃなくて、魔法使いを減らせってこと!! と、ボクの心臓を返せってことだよ」


「結論から言います。二つとも無理です。翠殿が暴力が嫌いな方で良かったです。ニック殿のような人が相手では、魔法では勝てても、腕っぷしでは勝てませんから」


 エリシスは、ポンポンと翠の肩を叩いて、その場を去って行った。

 ガクンと肩を落とした翠の後ろから、知った声が耳に入って来た。


「精霊との契約を切る剣なら知ってるぜ」


「ニックさん」


 冒険者のニック・カールトンだった。


「本当ですか?」


「ああ、本当だ。マラ山の魔族が持っていると聞いたことがあるぜ」


「マラ山?何処ですか?」


「大陸の最南端の山だ。そこはあらゆる魔族が集まってる巣があるんだ」


 ニックは、翠とエリシスの会話を盗み聞きしていたらしい。

 仲間と外で酒を飲んでいると思っていたら、魔法使いたちの使うテントに潜り込んでいる。

(ニックさん、魔法使いの言うことが信じられずに、探りを入れているのかもしれない……)翠は思った。


「その剣の名前は何と言うのですか?」


「『破光ディッセイの剣と呼ばれている。冒険者も何人か餌食になってるんだ。間違えない」


「よ~~し!! ひとっ飛びしてマラ山に行ってきます!!」


「お前、心臓が取られてるんじゃ……?」


「死んでも、辿り着きますよ!!」


 翠の覚悟は決まっていた。『神獣のラルカ』は、人間の味方のフリをしろと言ったが、魔族との戦いは望まない。

(方法があるなら、辿る道は一つだ!!)

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