第二章 心臓を取られ、魔法使いに協力

第11話  最悪なロイルの長

 大陸の東部に光の神、イリアス・エル・ロイルを祀る銀の森という聖地がある。

 そこには、イリアスの血筋だという魔法の使える人間たちも住んでいた。

 皆、神と同じような銀の髪に銀色の瞳を持っており、彼らは、自分たちを光の一族と名乗り、魔法が使えることを特権階級の様に思っていた。

 


 ▲▽▲



 大陸東部  銀の森、光の神殿


 ここには普段、神剣の姿を取っているイリアスが神剣の間にて祀られていた。

 今は、神は人型をとっている。

 一族の長たる、エスター・エル・ロイルに苦言を言うためである。


『エスター、何度も言うが無理な血族婚と、これ以上魔法使いを増やすでない。我の血筋は薄まってこそ、発揮するだろうし、精霊が増えれば、魔族も増えるのだ。自分で自分の首を絞めているのが分からぬか?』


 エスターは、神の言うことをいつも適当に聞いている。

 名指しの呼び出しをくらうのは、エスターが一族のロイルのおさになって、何度目だろうか。


 エスターは、笑いが止まらない。今回もほんのり銀色に輝く『神』と出会えたことに、心の中で祝杯をあげていた。


 人間好きで有名な神だ。必要であれば、人間とも契ってしまうような。

(だから、我が家が存在しうるのだ)

 神の怒る顔が見たくて。常に一族の長らしからぬ行動をしてきた。


 神官達は、一族の長に何も言えない。


『我にも堪忍袋がある故に、次に呼び出しがあった時は、その立場が変わる時と心せよ』


(そうくるか……)エスターは心の中で呟いていた。


「では、なるべく早く、魔族を討ってきます。他に御用が無いようでしたら、私はこれで失礼します。我が祖神よ、こう度々人間界のことに首を突っ込まれますと、威厳が損なわれますぞ」


 エスターは、銀色のまばゆい光に目が眩んだ。


 エスターは、高らかに笑って、神剣の間から出て来た。

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