第10話 勇者、アシュレイ・ロット
翠が目を覚ますと、人型になっていた。
そばには、勇者召喚で喚ばれたアシュレイ・ロットが眠っており、翠も安心した。見れば見るほど見たことのない髪の色をしている。こんな不思議な茶色と黒色の混じった髪の毛を見るのは初めてである。
大きな瞳は深い青色で、取って付けたような、皮の鎧を付けていた。
でもどう見ても、15~16歳の少年だ。
鍛え上げられた肉体を持ってる訳でも無く、屈強の精神がある訳でも無い。勇者と呼ぶには、あまりにも貧相である。
『異世界から勇者を召喚して戦いのリーダーになってもらう』という設定は、翠でもライトノベルで読んだことがある。
でもこれは、明らかな失敗だ。
(しかも、失敗したからと殺そうなどとは……)
翠は怒りが湧いてきた。
すると、手に鱗が浮いてきた。
どうも、怒りが湧くと、竜身になりやすいようだ。
(気をつけよう……魔法使いの奴らに気付かれて利用されないようにしないと……)
翠は、眠っているアシュレイ・ロットをおんぶして、魔法使いたちのいるテントの方に向かった。
野営地の入り口で、エリシスが待っていた。
「待っててくれたのかい?」
「風の精霊の奥方が、竜の若君が目覚めて、勇者殿を連れてこちらに向かっていると言うのですから……当然ですね」
「名前は
翠は、出来るだけ平静を装って、エリシスに話した。
「エセ勇者ですよ? それでワタシの召喚士としての腕さえ、疑われるレベルになってしまいました。何とか、体裁は取り繕いましたが、足手まといです。『いつでも死ね』と【リリエラの根】の毒を持たせてあります」
「それ、ボクが貰ったから、もう無いから。今後、『勇者』に変な扱いをすると、ボク、怒っちゃうよ? 心臓を取られれても、竜身には好きな時になれるみたいだし~?」
翠は、ニタ~~ っと笑って、エリシスに空いているテントを聞いた。
一番奥に人が使ってないテントがあったので、そこにアシュレイ・ロットを寝かせると、テントの外を見て大きく息をついた。
風竜となったことで、精霊たちの存在も視えるようになった。
ここには、精霊がそこかしこにひしめいている。
大部分が、翠でも分かる。下位の精霊だ。
これでは、魔族というものが増えるのも当たり前だろう。
「翠君」
「アシュレイ、目が覚めたかい?」
「こんな良いテントに……お前のお陰だね」
「良いってことよ。君はボクのことを「翠君」て呼ぶんだな」
「オレたち、同じ世界のものだよ……」
翠は驚いた。
「じゃあ、君も地球世界からの転生者かい?」
「転生者じゃない。オレは、地球で生きてる。でも強引にこの世界に転移させられたんだ。転移者は、不死なんだって」
(なんじゃ、そりゃ~~)
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