第7話 心臓を盗られたボク
「こら~~ 返せ~~ 俺の心臓を~~!!」
▲▽▲
勇者、アシュレイ・ロットが、あまり怖がるものだから、エリシスは、上空を飛んで仲間のところへ帰ることを諦め、地上を歩いて合流することに決めた。
当然翠も人型に戻ってエリシスに着いて行くことを選んだ。
途中で、何度も何度も風の奥方の忠告があったが、一切無視して、仲間に会えると同じ気分で、自ら、人間の世界に飛び込んでしまった。
「本当に、風竜か?確かに気配は大きいモノだが、その黒髪と茶色い瞳は風竜の持ち物じゃない。風竜が人型をとると、大抵淡い金髪や白金の髪を取る美丈夫だ。随分、裏切ってくれてるな」
翠を見て、エリシスによく似た容貌を持つ、魔法使いたちは言いたい放題である。
「ボクは女神に認められたんだぞ!!」
外見は、死んだときのまま、この世界に転生したのだ。
卵から孵るとか親がいることは無かった。いきなりこの世界に放り込まれたのだ。
竜が、人型をとると麗しいなんて、初めて聞いたことだ。
翠は、魔法使いの野営地に着くと、歓迎の意味だと言って酒を飲まされた。
その酒を飲んだ途端、身体が痺れて動けなくなってしまった。
「よくここまで、連れて来たものだな。エリシス。褒めてつかわすぞ」
「ありがとうございます。
エリシスによく似た中年の男が、にこやかに笑って言った。
「そなたの追放処分は、褒美に解いてやろう」
東方の光の神の一族、ロイルの長は上機嫌だ。
滅多に人前に出てこない竜が、目の前に現れ、人型にして痺れ薬を飲ませることに成功したのだ。
人型の竜は、人間よりも頑強であるものの、竜身の時ほど頑強ではない。魔法使いが竜族の心臓を狙うのは、主に魔族との戦いの戦力にするためである。
世界で最強の竜は、心臓を奪われても生きていけるが、自由を奪われる。
風竜は、人間に友好的だったが、あまりにも多く心臓が奪われる事件が起き、次第に人間と距離を置くようになったのだ。
「風竜殿の心臓を奪い取れ」
長は、一族の大地の魔法使いに命令した。
翠は、身体が痺れて動けなかった。薄れゆく意識の中で、キジトラの『トラ』の鳴き声が聞こえた気がした
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