第5話  魔族……?

 僕たちは三人で、エリシスの仲間のところに向かうことにした。

 ここからは、東の方向にあるらしい。


 世界の事は、エリシスが翠に説明してくれた。

 この世界には、タナトス大陸という大きな大陸と幾つかの小島で成り立っていること。

 タナトス大陸には、大陸を南北に横断する人の足では越えられぬ大山脈が存在すること。


 エリシスは、この世界の光の神の子孫だということ。

 神の子孫が精霊といわれる半透明の存在の種族と契約して、魔法が使えるのだという。


「じゃあイグニス女神は?」


「イリアス神の、こぼれだまと言われています。イリアス神の力が強くなったので、生まれてきた存在だと。位置付け的には、我らの神の妹神です」


「それで、少し頼りなく見えたのか?」


翠は、一人で納得した。


「女神は地上にいませんから、会った者などいませんよ。すい殿は本当に女神にあったのですね?」


 エリシスは、信じられぬように言うのであった。


「この世界には、光の神と闇の神、精霊と人間、竜族の他に、魔族という種族の生き物もいます。彼らは、人間を襲い食事にします。竜身の翠殿には怖くない生き物ですが、我らには、油断のならぬ敵です」


「フ~~ン……」


「ワタシの仲間が、近くにいます。飛んで行きましょう」


「君も飛べるんだ?」


「高位の風の精霊と契約してますから……」


 エリシスは、アシュレイ・ロットを抱き寄せて、フワッと浮き上がった。

 翠も真似して風を身体に纏わせてみた。

 そうしたら、浮いたのだ。


 エリシスと同じ高さまで追いつくと、後は、また羽が出てきたようで、アシュレイ・ロットが大騒ぎをした。


 翠自身、どうやったら、竜身になるのか分からないので、今は、エリシスに導かれるままに進むしかない。


 エリシスの頭上には、色っぽい奥方のような半透明の者が見えた。


「え? 風の奥方のことですか? ワタシの契約精霊です。彼女には色々助けてもらってます」


 相変わらず、キジトラの頭の色をした勇者は、ガチガチにエリシスにしがみついていた。


 山を一つ越えたところで、異変があった。

 一匹の見慣れぬ生き物が、三人の後をつけてきたのだ。

 とんぼのような、目玉をして、鋭い爪を持って空を飛ぶ……。


「まずい!! 魔族のアルゲイ族だ!!奴らはあの鋭い爪で皮膚を割いて血を啜るんです」


「何だって!!」


 途端、翠は味わったこともない、怒りが湧いてきた。

 翠の身体は、銀色に光り、淡い白金の鱗を持つ竜へと変貌した。


 その魔族に向かって、一羽ばたきすると、魔族は転がるように姿を消したのだった。

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