竜とねずみ

 空に長細いものが浮かんでいた。白い腹を地上にいる私たちに向け、悠然と泳いでいる。


(何だあれ)


 夢の中で私はそう思って見ていた。私のほかに気にしている人はいないようだった。頭の方でひげが揺れていたのは覚えている。そのもののそばを、プロペラ機が飛行機雲を作りながら飛んでいた。


 ほどなくして、今度は碧色の竜が空に現れた。物凄く大きいそいつは地上にいる私たちを睨みつけ、腕を伸ばして電線に引っかかりそうになるくらいだった。それを見て私たちは四方に散りぢりに逃げていった。


 場面が変わって、私は家のリビングにいた。


 と、ねずみが二匹、パソコン台の下から飛び出してきた。


「お母さん、モルカーだよ」


 ねずみが出たといってびっくりしている母に向かって、私はいっていた。実際そのねずみたちは、白と橙の混じった可愛らしい見た目のアイツだった。


(ねずみが出て騒ぎ始めたのは、きっと、竜が現れたことと何か関係があるに違いない)


 夢の中で私はそう思っていた。

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夢百夜 大沢敦彦 @RESETSAN

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