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「あの双子への対応ですね」

 殺し屋改め茶々は愛刀を見遣った。

「万全の状態なら、五分五分には確実に持ち込めると思います。でも、それでは殺し屋の名折れ。殺すならちゃんと殺します」

 いつもなら依頼人に言われた人を殺すだけだ。だが、今回は少し違う。

「灰さんは、あの双子を殺すことをどう思いますか?」

「あんたが殺したいなら殺せと言っただろう」

「そうなんですけど、ご相談です」

 灰さんは目線を逸らして考えてくれる。

「こういうのはどうだ」


「…双子に関しては決まったな。次だ」

「特犯と警官、政府の担当者ですね」

「そうだ、こいつらにはあまり興味は無いが…」

「必ず殺します」

 きっぱりと言い切った。

「私が嫌いなのは、他者を犠牲にしておきながら自らの行動を正当化して信じ込んでいるからです。そのお手本のようなあの人たちを生かす意味はない」

「できる限りの助力はしよう」

 そう言った俺に純粋な疑問を投げる。

「ふと思ったんですけど、灰さんって人殺したことあるんですか?」

 茶々の問いに即答した。

「ある。書類を運ぶことも、人間を死体にしてから運ぶことを依頼されることも俺の仕事だ。一般人程度なら問題ないが、基本は専門外だ」

「へえ」

 貴方のお仕事も大変そうですね、と顔に書いてある。

「でも、正直あの双子は別れて狙ってくると思いますよ。私が兄の方で、灰さんには弟。援護はしますが、頑張ってくださいね」

 茶々はそれが難しいことのようには言わない。彼女にとっての殺しとは日常なのだろう。

「そうだな。だが、ずっとここに引きこもっていては勝てない。そこで一つ提案がある」

「はい、なんでしょう」

 家は占拠された。ここがばれるのも時間の問題。俺たちはもう公認ではない、ただの犯罪者だ。そんな輩が行く場所。

「{東京の地下}に行かないか」


「なるほど。あそこなら私たちでも普通に生活できますね」

「東京の地下」とは、裏社会の王国である無法地帯を指す。指名手配犯やらがごろごろいても不思議ではない世界だ。

「でも、あそこの犯罪者たちは私たちのこと嫌ってると思いますよ。第一、あそこってどうやって行くんです?」

 その場所が本当に地下にあるのか。そもそも存在しているのか。これほどに犯罪を重ねてきても分からない。

「行き方は分かる。それに、嫌われ者はどこでも同じだ」

 流石運び屋、と言うべきか。日本の土地勘が恐ろしいほどにあるのだろう。

「…それもそうですね。行ってみましょうか」

 何が待っていようと、それを退ける力が、私にはある。退ける気力も、今はある。


 

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