第3話

さて、6年が経った今、初代校長である、勇者シンたちはどうなったかというと…


勇者シンと聖女セイラは結婚し、最果ての村に定住することを決めた。


賢者ジョーンズは、王都から奥さんを呼び寄せ、こちらも最果ての村に定住することを決めていた。


それから3年後にはシンとセイラの間に双子が生まれ、村中が祭りとなった。


ジョーンズ夫妻はというと、王都に残してきた息子と娘が無事、王都の学校を無事卒業し、息子は宮廷魔術師として王都に残り、娘は夫婦を追って、この最果ての村に移住し、現在はベルクカイザーの講師として教鞭を振るっている。


その美貌から、町の男たちのみならず、美貌の秘訣を知りたい女たちも学校に寄るようになり、これはチャンスだと思ったシンは大人たちにも魔獣との戦い方を教えた。


その結果、最果ての村の戦力は向上し、多少の魔獣に対しては村人でも対処できるようになってきた。


そして、そのことが功をそうし、村のことを憂うることなく、僕たち一期生は、15歳から3年間、王都の学院で高等教育を受けることができるようになったのである。


「では、シン校長、セイラ副校長、ジョーンズ先生…行ってきます。」


そういうと、馬車は動き出し、他の生徒たちも見送りにきた親や兄弟、教師陣に手を振って村を後にした。


最果ての村から王都までは、馬車で約15日、これが最果ての村が最果てと言われる所以である。


15日後…王都に着いた僕たちを迎えたのは、フェミリア王国騎士団員、ミャオとフェミリア王国宮廷魔術師団、ジャンであった。


ミャオは学校長であるシンの盟友で、シンたちが最果ての村に来た際には新米騎士団員として同行していた。


一方、ジャンはジョーンズ先生の息子であり、卒業したての新米宮廷魔術師である。


と言っても血は争えないのか、やはりその才能は秀でているらしく、一緒に町の中を歩いている時でも注目を浴びていた。


「君がバーン君だね!私のことは覚えているかな?シンたちに同行していた騎士団の1人だったんだけど…」


考えてみるといたかもしれない…けど…


「申し訳ありません…」


僕が謝ると、ミャオさんは顔を赤くして全然大丈夫!と許してくれた。


「えーと…バーン君でいいかな?」


今度は、反対の方からジャンさんに話しかけられた。


「はい。なんなら、ジャンさんの方が歳上なので、バーンと呼び捨てでも構いませんよ。」


僕がそう答えると、困ったような表情で、鼻の頭をかいた。


「そか…そうしたら、バーンって呼ばせてもらうわ。」


僕がはいと頷くと、ジャンさんは続けて話した。


「最果ての村に行ったうちの両親と妹は元気か?やっぱり、遠いからよ連絡は取れるとしても、自分の目で見たわけじゃないからさ、ちょっと心配で…」


気恥ずかしいのか、顔を背けながらの質問だったが、首まで真っ赤になっていた。


「そうですね!ジョーンズ先生は、とってもいい先生ですよ!村のみんなに愛されて、いつも優しく教えてくれます。奥様もとても気持ちのいい方で、よくうちの宿に来ては、母と一緒にお客さんに出す夕食作りをしてくれます!奥様…ジャンさんのお母様が作る料理は村だけじゃなく、村外から来た人たちにも好評です♪それと、妹の…」


話し始めたら止まらない…僕の悪いところである。


しかし、ジャンさんはそんな僕の話を嬉しそうな顔で耳を傾け続けてくれた。


「さて、着きました!ここが皆さんが本日から通う、王立学校フェルナンドです!」


「「「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」」」


もれなく、全員が大きな門を見上げ、さらには奥の大きな学校を見て、感嘆の声をあげた。


これが、シン先生たちが通っていた学校か…


6年前は、王都にきて学校に通うなんて考えられなかったな…


ここにいる誰もがそう思っているであろう顔をしていた。


だけど、僕たちだってシン先生、セイラ先生、ジョーンズ先生に教えてもらった一期生として、この学校にやってきたのだ。


「さぁ、みんなで行こう」


僕がそういうと、皆ぎ頷き、王立学校フェルナンドの門をくぐった。


そんな11人の子供たちをジャンさんとミャオさんは、笑顔で見送った。

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