第4話

さて、門をくぐってから、約5ヶ月が過ぎた。


ちょうど、今日から夏休みが始まる。


まぁ、貴族とか?勇者の末裔とか?ちょっと腕っぷしに自信があるいじめっ子とか?意地悪教師とかそんなのが、入学当時にやたら絡んできた。


その度に、11人は素晴らしいチームワークを発揮し、全てを"潰した"まぁ、◯してはないけど、精神的な部分も肉体的な部分にも恐怖という字を刻んだ。


学校をあとにすると、僕たち11人は一路最果ての村を目指した。


帰りは行きと違い、馬車ではなく、馬より早く体力がある、走竜車を用意した。


借りたのではなく、用意をしたのだ。


実は、ベルクカイザーの残したアイテムの中に、空間拡張の付与がされたバックがあり、その中に魔獣の素材を入れて王都に持ってきていたのだ。


それを買い取り屋に持って行き、大量の軍資金を得ることができた。


そのため、帰りは走竜2頭と専用貨物車2台を購入し、たくさんのお土産を持って、帰路についた。


学園で有名になった僕たちは、最果てのイレブンなんていう、小っ恥ずかしい呼び名をつけられ、生徒会や部活、研究活動など様々なところから勧誘を受けた。


そして、全員がそれを断った。


なぜって?


それは…面倒だからである。


政治的な部分や学校の問題解決など、そんなのは青春を楽しく謳歌したい人たちがやるべきなのだ。


僕たちの最終目標は魔境における討伐活動。


ベルクカイザーですら敵わなかった魔獣を見つけ、さらにその先を見たい。


それが、僕たちベルクカイザー一期生の大きな目標である。


そのため、夏休みは地元に戻り、魔獣を狩り練度をあげるのだ。


馬車の行程より、10日も早く着くと、初日は全員が、それぞれの家にお土産を抱えて帰った。


2頭の走竜は、うちが宿屋ということもあり、竜舎もあることからうちで預かることにした。


2頭の走竜、メルとグラはとても人懐っこく、11人の顔を覚えると、会うたびに顔を舐めてくる。それはそれで困るのだが…


うちに帰ると母さんと父さんがびっくりした顔でこちらを向いた。


そういえば、帰るって話してなかったかも…


そして、たまたま、そこに居合わせたのであろう、シンさんとセイラさん、2人のお子さんに、ジョーンズ夫妻までいた。


全員が驚いた顔でこちらを向く。


そして、腹に衝撃が走る。


「ごふっ……メアリー…兄さんに飛び込む時は、不意打ちはやめなさいって言ってなかったけ…」


腹部をみると、10歳くらいの女の子が僕の腹に抱きついていた。


「おにいちゃん!!おにいちゃん!!おにいちゃん!!」


妹のメアリーの耳には僕の話は入っていかず、グリグリと顔を力いっぱい押し付けてきた。


「メアリーさんや、ちょっと身体強化入ってませんか?」


仲良き兄弟の再会の儀は、僕の降参で終わった。


そして、一度落ち着いて席に座ると、改めて全員に挨拶をした。


「んもぉ!帰ってくるなら教えてくれればいいのに!かまどの火消しちゃったじゃないの!」


そういうと、母さんはそそくさとキッチンに向かい、かまどにまた火を入れた。


本当は、晩御飯は食べてきたのだが、母さんの手料理を久しぶりに食べたいという欲求の方が、買ったのだ。


「本当にな…メアリーを見てみろ。もう絶対、お前を離さないぞ…」


父さんが迎えの席に座ると、メアリーの様子を見て苦笑いしていた。


まぁ、それはそれでいいかな?可愛い妹だし。ただ、身体強化だけはやめていただきたい。


「それで、改めて…お帰り。学校はどうだった?」


「父さん、母さん、メアリー、そして先生方…ただいま帰りました。と言っても夏休みの一時帰宅だけど。」


それでも、帰る場所があるって本当にいいなぁ。


「学校は…まぁ、いろんな人に絡まれましたけど、僕たち11人はシン先生に教えていただいた通り、"優しく"対応してきましたよ」


するとセイラさんがシンさんの方をゆっくりと睨みつける。


「いやいや!俺はさ、貴族とか生徒会とか面倒だから上手く対応しろって言っただけだから!何しろあれしろなんて教えてない!!!」


セイラさんに睨まれたシンさんは、焦って弁明する。


「って言ってるけど、バーン君…ほんと?」


セイラさんの標的がこちらに移ったこと感じつつも、ゆっくりと頷いた。


「まぁ、そうですね。対応は僕たち11人で考えて、対応しました。ただ、少しやり過ぎた感はあるので、後ほど抗議がきたら、シン先生に対応をお願いします。」


シンさんに向かってぺこっと頭を下げた。


「ならいいけど…まぁ、あなたたちの実力なら絡まれても仕方ないわよね…はぁ…シン!ちゃんとこの子達を守りなさいよ!」


セイラさんは納得してくれたと同時に、学校長である、旦那のシンさんに気合いをかけた。


「そういえば、ジョーンズ先生の息子さんと騎士団のミャオさんに会いました!あの時は案内のお願いをしていただきありがとうございました。」


ジョーンズ先生とシンさんは首を振って当たり前だとでも言いたげだった。


「それで、ジョーンズ先生夫妻に、息子さんから預かっているものがあるので、お渡ししますね!」


僕は、収納バックに手を入れると、ジャンさんから預かった、王国の品々を取り出して渡した。


実はあの案内の後も、ジャンさんとは交友を持ち、予定が合えば交流をしていた。


そして、今回の帰省にあたり、ジャンからジョーンズ夫妻にさまざまな品を渡して欲しいと託された。


「おぉ。ありがとうなバーン。ジョンは元気にしてかい?」


「はい!とてもお元気でした!宮廷魔術師の仕事は大変だけど、同時にやりがいがあるらしく、会うたびに新しい魔術を覚えていたので、本当に苦戦しました。」


その言葉に、ジョーンズ先生が驚いた顔をする。


「バーン…もしかしてジャンと手合わせしてたのか…?」


「そうですね。魔獣にも魔術や魔法を使う奴らもいますし、いつか魔術師と戦わなければいけない時が来るかと思い、手合わせをお願いしていました。ジャンさんも同じ考えらしく、いい練習になるって言って手合わせしてましたよ。」


ここは、この前炎の魔術で、ここは氷、ここなんて雷ですよ?


なんて、怪我した箇所をジョーンズ先生に見せると、僕の言葉に呆れたようなジョーンズ先生だった。


奥さんはニコニコしながらお土産を見ていた。


そんなこんなで、土産話に花が咲き、夜も更けて行った。




「あのー…メアリーさん?僕はもう寝るのだけれども、離していただけませんでしょうか?」


という伺いを立てたけども拒否。


メアリーは、覚えた身体強化を上手くコントロールし、僕から離れなかった。


「しゃーない…一緒に寝ますか…」


久々の帰省はとても楽しかった。

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