第69話 親友の存在
「はぁ~!?どういう事。アカバンでもくらっちゃったの!?」
「違うの、あの美咲。あたしの話を落ち着いて聞いてくれるかな?・・・」
それから彩音はあまり説明は上手な方ではないが、ロックスとの出会いからゆっくりと話し始めた。ロックスが自分で勝手に動いて攻撃スキル等完璧に使いこなす事。ロックスが話しかけてきてすごい驚いた事。ロックスといつもおしゃべりしながらゲームを楽しんでいた事。それらをゆっくりと頑張って話した。
美咲は最初は何言ってんの!?変な薬とかやってないよね!?と本気で心配していたけど。彩音の真剣な表情とその眼の光をしっかりとみて少しずつ彩音の話を信じていった。
昔から自分の作ったキャラとおしゃべりしながらゲームをするのを夢見ていたことも。
彩音は美咲に信じてもらおうと、事細かにこんな出来事があったとか話すうちにまた思い出しては、涙が出そうになるのであった。
「わかった。彩音の話を信じる!それでそのロックスがどうしたのよ!なんか意地悪してきたの!?」
「ロッくんは一度もそんな事しないよ・・・・でも・・・もう会えなくなっちゃったの・・・・」
「キャラが消えたの!?」
彩音は目元をぬぐいながらまた首を激しく振って答えた。
「あたしが・・・しなせちゃったから・・・ロッくんの
そしてそれまで頑張っていた心のダムが決壊したように慟哭した。
本当は誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
でもこんな事を話してもきっと誰も信じてくれないだろうと思い。自分の心の中にそっとしまい込もうとしていた。が、それを親友の美咲が聞いてくれて信じてくれたことの喜びと、蓋をしようとしていた心のダムの決壊によりもう止まらなかった。
その泣きっぷりを見た美咲もなんだか心が痛くなり、優しく彩音を抱きしめ肩を寄せ合った。
しばらくして落ち着いた彩音は、ゆっくりとしゃべり始めた。
「でもねロッくんが言ってたの。・・・きっと復活させる方法はあるはずって・・・」
彩音は一人でモニターを見るのはつらいから、美咲に家に来てほしいとお願いした。今すぐ行こうと、二つ返事で美咲は立ち上がった。
「全く水臭いんだから、最初にまず私に話に来なさいよ!」
これは罰よと言って軽く肩を叩かれた。
「ごめんね。そしてありがとう。」
そしてまた軽く肩を小突かれた。
帰り道にだんだん彩音の表情も明るくなってきた。やはり一人で抱え込むより親友が傍らにいてくれるのが大きかったようだ。
~~~~~~・~~~~~
__数時間後
「ただいま~」
「あら早かったわね、あら美咲ちゃん。久しぶりね。」
「お久しぶりです。今日はなんか職員会議とかいって早く終わったので遊びに来ました!お邪魔します。」
「あらぁ~そうだったのね、さぁ上がってゆっくりしていってね。」
美咲は彩音に向かってこっそりと舌をだした。
彩音も微笑み返すくらいに元気を取り戻していた。
彩音の母も少し明るくなったその表情と親友が来てくれたことに安心した様だった。
さっそく彩音の部屋に行き、PCを立ち上げ【ディスティニーフェアリー】を起動した。美咲とともに覗き込んだモニターには、物言わぬロックスが佇んでいた。
「なんの変哲もないね、これが喋ったの!?」
「これって言わないで、ロッくんなの。」
まるで彼氏を紹介される様に彩音が言うものだからおかしくて笑いそうになったがごめんと謝ってまたモニターをじっと覗き込んだ。
するとやはりMMORPGのゲームでは先輩の美咲がすぐに気づいた。
「あ、なんかポスト光ってるよ、なんか来てるね。」
彩音は美咲が指さすインターフェイスの右上のポストが光っているのを始めてみた。
そしてそれをクリックするとそこには・・・
『これは、あなただけの特別なクエストになります。・・・・』
「こ・・・これ・・・・」
それを見た瞬間、彩音は声も出なくなり、また涙があふれだし震える指先でその続きをクリックし、目を見開いて読んだ。
クエストにはこう書かれてあった。
『これはある者の魂を救済するクエストです。もしあなたが心から願うならばきっとやり遂げられるでしょう。ただしこのクエストを受けるかどうかはあなた次第で、このクエストが表示されるのは、一度きりです。中には非常に厳しいものもあり誰かの助けが必要な事もあるかもしれません。その覚悟があるのであれば【開始】を・・・』
彩音は最後まで読まずに速攻で開始ボタンをクリックした。
「ね!、美咲。ね!、あったでしょ・・・あったよ!」
彩音は涙を流しながらも、その瞳は笑っていて希望に明るいものへとみるみる変わっていった。
「あったねぇ・・・」
美咲も内心半信半疑であったが、これを見せられては、信じるしかなかった。
彩音の母がジュースとお菓子を持ってきてくれたが、彩音は振り向きもせず、今大事なところだからそこに置いといてと言ってモニターにかじりついていた。
その返事の声の強さに母は安心してほほ笑んだ。
その最初のクエストは孤独の塔を50階まで走破せよ!
「あれだね最初の方にちょっとクエストがあるソロ専用ダンジョン。」
美咲がすぐに教えてくれた。
彩音は首をかしげながら思い出していた。
「美咲これって、もしかして最初の方にかわいいお猿さんがでてくるとこ?」
「そう、それ!」
「50階って行けるものなの・・・?」
「ロックスなら余裕でしょ!」
彩音の瞳にもう涙は無かった。その瞳には覚悟を決めた炎がぽつぽつと宿り始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます