白熊、試行錯誤。

三日間にわたるプレオープンを終えた三頭は、例によって店のソファ席で作戦会議中。

「今回のプレオープンを終えて、俺たちがやるべきことは三つだ。」

ヴァレンティノは難しい顔をして、指を立てながら話し始めた。

「一つ目は子供向け商品を作ることによって子連れのリピーターを獲得すること。二つ目は、当初の通り主婦層獲得に向けた競合店の分析。そして三つ目が…」

ヴァレンティノは一度言葉を切り、葉巻の煙を長く吐き、そして続けた。

「平日の客層への対策だ。」

「だよな。」

ルッカはその言葉を聞くなり、げんなりした様子でそう漏らし、アルロは眉間の皺を深くした。

「そうだ。平日のこの店が高齢者施設にならねえように対策を取らなきゃならねえ。」

ヴァレンティノは一番深刻そうな顔でそう伝えた。三頭はため息をつき、少し考えた後に一番簡単そうな問題から話し合うことにした。

「とりあえず、競合店の分析は実際に店に出向いて様子を見るのが一番だ。もう目星はつけてある。」

ヴァレンティノは胸元からすっと一枚のメモを取り出し、二頭の目の前にひらひらと見せた。

「いつの間に…。」

アルロはそのメモをまじまじと見ながら呟いた。そのメモには平日の昼間に主婦で賑わっているカフェやドルチェリーアなどが数軒記載されていた。

「メニューや営業の方法を確認してくれ。あくまで“お客さん”として、だ。いいな。」

アルロとルッカは黙って頷いた。その様子を見て、ヴァレンティノは葉巻の煙を天井に向かって吐き出し、話を続けた。

「次に考えるべきは…子供向けのメニューだ。これは俺とルッカだな。」

ヴァレンティノは腕を組みながら少し考え、口を開いた。

「まあ、お子様プレートとかが相場だろうな。」

ヴァレンティノの言葉にアルロは頷いているが、ルッカはやや困ったように口を開いた。

「フードはお子様プレートみたいなのがあるけどよ、ドルチェで子供向きって何をすればいいんだ?俺はアルロみたいに可愛いクマちゃんは作れないぞ。」

しかしルッカのその言葉は

「練習しろ。」

というアルロの一言で片付けられた。ルッカはぎろっとアルロを睨んだ後、何か言いたげな様子であったが、長いため息を吐きながら天を仰いだだけであった。そんなルッカの様子を尻目にヴァレンティノは話を先に進めた。

「じゃあ次だな。これが一番の問題だ。休日はいいが、平日は客のほとんどがじじばばばかりだ。」

ヴァレンティノの言葉に二頭は黙って頷く。

「ドリンクしか頼まねえのはなあ…。だが、今のメニューじゃあいつらが好んで食いそうなもんはなさそうだな。」

ヴァレンティノの言葉に、ルッカは眉間を押さえ、

「結局じじばば向けのメニューも必要じゃねえか。」

と嘆いた。

「食べやすいように少量にも対応できるようにするか、新たにメニューを作るかはそれぞれの担当者が決めればいい。ただ、作ったところでやっぱりドリンクだけ注文する客は多いだろうな。」

ヴァレンティノは二頭にそう投げかけた。

「じゃあ、フードかドルチェのワンオーダー制にするとかか?」

アルロは問いかけた。ヴァレンティノは少し考えて、

「別にドリンクだけの注文が悪いわけじゃねえ。問題なのはランチで利用したい客が入れねえのと、利用時間とのバランスが悪いってだけだ。ワンオーダー制にすると客自体の数を減らしかねない。」

と返した。三頭は暫く顎をさすりながらああでもないこうでもないと意見を出し合った。数分後、ルッカはじゃあ、と口を開いた。

「ランチタイムとティータイムで分けるのはどうだ?」

二頭はじっとルッカの言葉の続きを待っている。

「店の営業は11時から16時までだろ?ランチタイムを開店から14時に設定して、残りの2時間はカフェとしてドリンクのみの注文も受ける。」

「なるほど。そうすればランチの対応もできて、茶だけをしばきに来る奴らの対応も誰かしらできるってわけか。」

ヴァレンティノはなるほどと納得した様子を見せた。

「まあ、人数もギリギリなのは分かったしな。色々試してみたらいいかもな。」

アルロも賛成したところで、当面のリモーネの方向性は決定したのだった。


 



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