白熊、商品開発。
三頭の厳つい白熊たちは、それぞれ担当する分野のメニューを再考し始めた。
「いいか、キーワードを忘れるな。」
ヴァレンティノが二頭に向かって指示すると、二頭は、はいはいという適当な返事を返した。
一時間ほど経った頃、三頭の元マフィア熊はそれぞれのアイデアを持ち寄った。
「じゃあ俺から。」
ヴァレンティノは再びフードメニューを発表した。
「やっぱりブランディングが大事だからな。」
その一言と共に示された内容はこうである。
・堅気のパスタ(レモンクリームパスタ)
・ボタンマンのピザ(生ハムとレモンのピザ)
・寝返りのリゾット(シーフードレモンリゾット)
・ジャンクソテー(白身魚のレモンソテー)
・オメルタ・フリット(チーズフリット レモンソース)
・仕立て屋のフォカッチャ(レモンフォカッチャ)
二頭は絶句した。
「これ…ネーミングどうした。」
ルッカは呆れた様子で問いかける。
「キーワードを示しただろう。元マフィアという要素を入れたらこうなる。」
ヴァレンティノは真面目に答えた。
「堅気のパスタって…」
アルロも首を横に振った。ルッカはメモを取り上げるとまじまじと見つめ、
「メニューはいいが、名前は却下だ。センスが無え。」
というと、ヴァレンティノは不服そうにルッカを睨んだが、それ以上何も言わなかった。
「次は俺だな。」
ルッカは自身のメモを開いてみせた。
・コーサ・ノストラ(レモンパイ)
・ヒット(レモンジェラート)
・ママルーク(パンナコッタのレモンソースがけ)
・マーダーインク(レモンティラミス)
「お前もかよ。」
アルロは眉間を指で抑え、ため息をついた。
「あいつと一緒にするな。全然違う。」
ルッカはアルロをギロリと睨みつけ、メモを手に吠えた。
「確かに元マフィアってのは強いアイデンティティを持っちゃいるが、もうこの見た目だけで十分だろ。情報過多で客が追いつけなくなる。」
とアルロは二頭を交互に見やり、諭すのだった。
「じゃあお前の考えたのも見せてみろよ。」
ヴァレンティノはアルロの持つメモをぶん取った。
「どうせ俺らと大差ねえだr…」
そこまで言うと、メモを見るヴァレンティノの動きが止まった。そこには、
・ヴィーナスの誕生(ハニーレモンジュース)
・ユダの接吻(レモンスカッシュ)
・モナ・リザ(レモネード)
・三美神(レモンミルク)
・ゲッセマネの祈り(レモンチェッロ)
・アルプスの真昼(レモンワイン)
なんと美しい文字の羅列だろうか。
「お前…こんなキャラだったか?」
ヴァレンティノはメモを見ながら笑いを堪えている。
「あ?うるせえぞ。破滅的なネーミングセンスのやつに言われたくねえよ。」
アルロは声を上げるとメモを奪い返し、やや恥ずかしそうに舌打ちした。
結局シンプルにそのままの商品名が採用されたのであった。
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