第13話 大工、空き家の竹と戦う(後編)

切った竹はそのままだと重すぎて運べない。

庭に放置して一度枯らせてから、運ぶことにした。賢い。


第二回駆逐隊の出動日は、まずは溜まった竹を外に出す所から始まった。

近所のレンタカーショップで軽トラを借りて、運び出す。

捨てる場所はそこから片道1時間掛かる産廃処理場だ。

田畑が多くある地域のため、機械的な産廃の他に、植物や土木なども積極的に受け入れてくれる場所があった。当然有料だが、ありがたい。


いつも渋滞する国道を、座り心地のいいとは言えない固い助手席に座って大量の竹を捨てに行く。


軽トラに積んで1往復では全く終わらず、結果的に何往復もすることになる。


軽トラ組が廃棄に行っている間、残った人間で庭の駆逐をする。


竹がすべて腰くらいの高さで切られ視界が良くなった。

良くなったところで想像以上に竹以外の植物が多いことに気づかされる。


たかが雑草だけど、元気に育ちすぎて根がかなりしっかりしていてちょっとひっぱったくらいでは抜けない。

隣家に侵入するほどの大きな木がいくつもある。

すべて根絶やしにするには一体どれくらいの時間がかかるのだろうと考えるだけ途方に暮れる。でもやるしかない。


残った人間でそれぞれ担当エリアと担当農具を決めて、どんどんあらゆる植物を根っこから除去していく。


木はチェーンソーで切って、切り株は割って、根は掘ってやっと取り出すことができる。取り出した切り株は大きすぎて一人で運ぶことはできないので大人数人でやっとこさトラックに積む。

竹は掘るしかない。大きい鍬で掘って掘って、深く隣の竹と絡みついた根を切ってやっと取り出すことができる。1つやるのに20分かかる。ざっと100本は竹があるのにどうしてくれよう。でもやるしかない。


大量の枯葉や小さい植物は麻袋をいくつもホームセンターで買ってきてその中に入れる。これも何日か放置して、枯れた時に産廃処理施設に持ち込む。


ごみ処理班が帰ってきて、さらに全員で切った木や竹をトラックに積み込み間髪入れずにもう1往復行く。1度行くと2時間は帰ってこないのでその間また作業を続ける。


もう早く日が暮れてくれと願うばかりである。


結局その日もすべての植物を駆逐することはできなかった。

しかし、玄関前の1.5m×4mのエリアだけはなんとかすべての植物を除き去った。


藁にもすがる思いで、ホームセンターに行き、遮光シートと除草剤を買ってきた。

除草剤を庭全体に撒いてから、遮光シートを隙間なく敷く。

テープや杭で頑丈に固定した。


どうか、その隙間から竹が生えてきませんようにと全員で祈った。


3か月後、様子を見に行くとなんと遮光シートを敷いた場所からは一切竹もそのほかの植物も生えてきていなかった!


勝った!!!俺たちは勝ったんだ!!!!!


と雄叫びを上げ、帰路につく。

遮光シートの奥、遮光シートを敷いていないエリアには新たな木がにょきにょき生えていて、竹も元気に伸びていたことには誰も触れない。見て見ぬふり。


どう考えたってやり直しである。


あまりにも堂々巡りが過ぎるので、だれか重機持ってきてユンボで駆逐しない?という半分冗談、半分本気な話をしている。


実は大工、機械の運転諸々は得意でフォークリフトの免許を取っている。

フォークリフトじゃ何の役にも立たないが、次に集まって駆逐隊が出動する日までにユンボが使えるようになれば、こんな苦労もうしなくていいのではないかと思う。

大工、ユンボ使えるようになってくれよ。


「でもさ、ここユンボ入れられなくね?」


誰かが幻想を打ち砕いた。

庭と道路の境には石垣があり、まずそれを壊し、盛り土を取り払わないとユンボは入れられない。

そんなことできるのはさすがに工事業者だけなので、そこまでやってもらうなら最初から庭の解体もお願いしたいよね。というのが満場一致の意見だった。


もうそもそも素人が竹と戦うことすら無謀だったのかもしれない。


結局そのまま庭は1年以上放置されてしまい、どうなっているのか誰も知らない。

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