第10話 工具、イントロドン!

ある夜、大工と2人子どもが寝静まった寝室で他愛のない話をしていた。

主には大工の仕事の話を聞いているのだが、その日大工は饒舌でちょっと興奮気味だった。


もう寝るね


と饒舌な大工な話を一方的に強制終了し、私は自分の寝室に帰っていった。

自室のドアを開けようとした瞬間、


「うぃん、うぃん、うぃん」


と小刻みなモーター音が上から聞こえる


またか、、、


上階に越してきた新婚夫婦がどうやらDIY好きっぽくて時間を気にせず工具を使いまくる。

ちなみに、その新婚夫婦の前に住んでいた老夫婦も一枚板のデカいのを搬入して自分たちでテーブルを作ったりしていた。


このマンションのこの列はDIYバカばっかりなのか。。。


でも、さすがに深夜0時近くなってモーター音とどろかせてるのはないだろと不満だった。

うちも時々大工がモーター音ぶっ放すが、さすがに日中だけにしている。


うぃん、うぃん鳴り続けているので大工の元へ。


「聞こえる?なんか鳴ってる上から」


「あ、本当だ。うるさいな、何時だと思ってるんだよ」


「本当だよね、ちょっとこれはないよね」


と会話しながら、まるで料理に使うハンドミキサーのような鋭くもないし、どちらかというと小さい器具っぽい音を聞いていた


「気にするとずっと気になるよね」


「うん」


うぃんうぃいん、ういん

うぃん、うぃんっ

うぃん


断続的なリズムで使うから余計気になる


「何してんだろうね。ハンドミキサーかな?でも家電ぽくないよね」


と言うと大工は


「リューターだね」


と即答した。


「へ?りゅーたー?」

「リューター」

「りゅーたー???」


何それ。初めて聞いたわ。

リューターって何?と聞いたらもう延々と話すだろうから聞かなかった。聞いても興味なさすぎて忘れるし、それより


「音聞いてわかるの?」

「わかる」


ちょっと怖いと思った。

大工は日常的にあらゆるモーターの音を聞き分けて生きている。たぶん。

そんな特技があるなんて知らなかった。

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