第8話 大工になりたい夫、通勤用の車を買うか買わないか(7)

遂にこの悩みからも解放される。

それは私たち夫婦にとって最高の瞬間だった!


お気に入りの新型ロードスターをカタログから選び、見積を出してもらう。

待ってる間もそわそわ。

「色、どうしようか」

とか今さら私の意見を取り入れてあげるパフォーマンスしてくるが、知ってる。もう色何て私の意見聞く気がない。決めてきてるに決まってる。ただ否定されたくないだけ。


「(興味ないから)何色でもいいんじゃない?何色がいい?」


「くろーー!かっこいいよくない?」


「うん、すごいいいと思う!!!」


という感じで無事に心理的安全性を確保した。


落ち着かなくて席をとって関係ないRXを見に行く。かっこいいとか言いながらソワソワしている。


「そっちにする?」

って聞いたら「いや!!!!!!!」といつもの5倍くらいの声量でシャウトしていた。


屋根の色、オプションパーツなどをカタログから選んでいく。


私はパーツについてはよくわからないが、A氏と大工は一生懸命パーツについて話している。A氏は1か月5000キロは走る生粋のロードスターオーナーである。

もはや会話が営業と顧客ではなく、ユーザーオフ会のノリ。楽しそうで何より。


あるパーツについて二人があーでもないこーでもないという話をしている。

それが何のパーツかは最後までよくわからなかったがどうやら、なくてもいいけどあるとかっこいい5万円の何からしい。


「え、それなくてもいいんですよね?なくても走れる?けど付けようっていう話してるの?」と純粋な疑問をぶつけた。


「え!そうなんですが、、、そうなんですが、、、でもこれはですね、絶対にあったほうがいいんですよぉぉぉ!!!!!!」

急な言い訳モードで熱弁するA氏

「や!!これはね!!!!こーであーで!!!あるとねすごいよくて!!!!」

身振り手振りで説明にならない説明を誰よりも大声でしている大工。


「いや、、、聞いただけで、全然ダメって言ってなくて。。。」


「あ、あ、そうですよね、、、、!!!!すいません!!!!」

A氏声でか。


何なん、その人に否定されると死にそうになるパーツ愛。

否定してないから、付けたらいいよ、なんぼでも好きなもの。

お願いだから気が済むまでやってくれ。

お願いだから自宅に帰った後「やっぱこれ付ければよかった」とか言いながらパーツのスペック表を眺める生活だけはやめてくれ。

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