第7話 大工になりたい夫、通勤用の車を買うか買わないか(6)

子どもを連れてファミリーカーを運転して自宅に帰る。

娘だけを先に玄関に返し、大工に玄関前から電話する。


「今からディーラー行くからすぐ来て。買うから」


え?え?


と慌てふためく大工はそれでも着の身着のまま、手ぶらで出てきて興奮気味に車に乗った。


「今からマツダ行くから。今日買うから」


「え?え?買うの?え?」


と混乱しまくりで口では驚いているが、顔がニヤニヤしてしまっている。


「もう3年もディーラー通って、毎日スペック表眺めて、、、もういいでしょ。ロードスター以上に欲しい車ないんだから買いな」


「で、でも、、、え?まじ?」


おろおろしている間にマツダに着く。自宅から10分の距離なのだ。


マツダについて車を止めるやいなや、いつもお世話になってる営業のA氏に


「こんにちは今日は買いに来ました。やっと買いに来ました。今日もう契約します。

今日は私はA氏の見方です。この人にサインさせますから。3年お待たせしました」


と宣言した。


「いやー、、、えへへ」と大工はニヤニヤが止まらない。


実は大工はこの時点でもう欲しい車種が決まっていたようだった。

Japan Mobility Showに行ったのが10月後半で、その時に新型のロードスターを見てきてしまっていた。


黒光りする最新のロードスターはかなりかっこよかったらしい。

開幕ダッシュしてロードスターの展示エリアまでいくやいなや、並んで運転席に座って、ちょっと触ってみたりしてきたらしい。写真もしっかりとって。


ちなみに仕事で展示会に行っているので、ロードスターは関係ない。けど開幕ダッシュはロードスターのために頑張ったそう。


そして当然、その最新型のロードスターに一目ぼれし、心に決めて帰宅してきたという具合。


ただ、新車、2人しか乗れない、〇百万円、MTだから大工しか運転できない、どう考えたって買うのは非合理的、、、でもかっこいいいい、くそーーーーーー

という気持ちがずっとぐるぐるして疲労困憊していた。

もはや恋煩い。

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