第2話 大工になりたい夫、通勤用の車を買うか買わないか(1)
大工は車が大好き。
大好き過ぎて、学生時代は学生フォーミュラサークルに入っていたり、車関連の仕事(本職)にしたりするくらいには車が好き。
常に車の情報をキャッチし、常にどの車がいいとかかっこいいとかよくないとか考えている。趣味と仕事が一緒になったような感じだ。
すごく幸せな人生だと思う。
大工には家族がいる。4人家族で小さい子どもがいて、地方住まいなので、必然的にファミリーカーを持っている。
ある日大工はものすごく不機嫌だった。
「どうしたの?」と聞いても教えてくれない。
(あ、これは仕事で何かあったパターンだわ。それにしても機嫌が悪い)
その夜、大工はいつも通り暗闇でPCで一生懸命マイクラをしている。
ずっと穴掘ってる。
穴掘ってるときはやばい。
大工は病んだり、悩みが大きいほど穴を掘りがちである。
私の知る限り最高で5時間穴を掘り続けていた。狂気。
その夜は「穴掘ってるなー」と思って私はさっさと寝てしまった。
次の日の夜、穴を掘りながら大工はPCモニターに検索したロードスターのサイトを表示している。
ロードスター見ながら、穴掘っている。狂気。
さらに次の日も、その次の日もずっとロードスターを見ている。
ロードスターじゃない車も見ている。どうやら中古車を見ているようだ。
「車ほしいの?」
と聞いてみると、穴を掘るのをやめて重い口を開いた。
どうやら、勤めている会社の都合で車通勤を強いられることになりそうだということ。車がないと行けない場所に毎日通勤が必要になる。
大工が通勤でファミリーカーを乗っていってしまうと、残された私と子どもは幼稚園の送り迎えや通院に車が使えないため詰む。
そのため強制的に2台目が必要になるということだった。
何でそんなに毎晩穴掘るほど不機嫌なのか、その時私にはわからなかった。
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