第43話 勇者の嫁入り??

「さっきも言ったんすけど、今の状況ってアルティメットエンドに向かってる気がするんです。でも、アルティメットエンドって難易度超SS級のエターナルトゥルーエンドをも超える難易度で、ヘタに狙うとバッドエンド一直線なんすよ」

「ちょちょちょ、ちょっと待って! バッドエンドって、まさか……?」

「魔王復活からの勇者敗北、人類滅亡エンドです」



 スケールがデカい!!



「聖剣も見つけちゃってますしね、もう後には引けないっていうか。やっぱりレイモンド様かマクスウェル様と結ばれるエンディング辺りで手を打った方が確実かもしれないっす。俺も死にたくないっす」



「「「…………」」」



 え、何で僕、いつの間にかこんなに追い詰められてるの?



「いや、待って。ちょっと待って。とにかく待って。それはそれで、絶対色々問題あるんでしょ!?」

「それはまぁそうなんですけど、アルティメットエンドはあまりにもハイリスクハイリターンが過ぎるっすよ」

「……ハイリターン?」



 ハイリスクというのはもちろん人類滅亡だろうけど、ハイリターンとは?



「それだけの超難易度のエンディングですからね。クリアさえ出来るなら、魔王は倒され世界は平和。男爵領は大繁栄で、みんなも仲良し。文句無しに全員ハッピーな、まさしく大団円エンドです」

「…………」



 文句無しに全員ハッピー……。

 男爵領は大繁栄……。


 それはまさしく、僕が一番望んでいるエンディングなのではなかろうか?



 とはいえ、人類の滅亡と僕らの幸せを天秤にかけるのも怖すぎる。




「なぁ、意外といけるんじゃないか? アルティメットエンド」



 僕が躊躇ちゅうちょして戸惑うその横で、マックスが事もなげにそう言った。



「だってよ、何気に今のパトリックはかなりのハイスペだろ? 成績も良い、運動も出来る、レベルは異常な程高い」



 何だ、どうした!?


 普段マックスに褒められる事なんて滅多にないし、急にそんな事言われたら照れるんですけど!?



「ルックスも……本人に磨く気がないせいで今はこんなもんだが、元は悪くないからこれからどうにでも出来る。攻略対象者達オレ達全員とそれなりに仲良くしてるし、イベントもアンジェと二人で起こしてる分、むしろ巻いてるくらいだろ?」



 いやー、磨く気が無いもなにも、ゲシュタルト崩壊起こすほど毎日美形に囲まれてるのに、今更こんな平凡な自分をどうこうしようなんて思えませんて。

 イベントに関しては、確かにそうかもしれないけど。

 


「言われてみればそうっすね?」

「だろ? なら攻略しない手はないだろ! ま、最悪攻略失敗しそうになったら、俺がリックを嫁にもらってやるよ」


 ぶっ!?


「ちょっと、もうっ! 何言ってるのさマックス! 僕がおヨメになんて行ける訳ないでしょ!?」


 血相変えて抗議する僕を見て、ケラケラと笑うマックス。

 本当こういう時のマックスはタチが悪い。



「いや、そもそもリックを巻き込んでこんな状況にしてしまったのは私だ。ヴィオレッタを救って貰った恩もあるし、いざという時は私が責任を取ろう!!」

「レイまでやめて!?」


 レイの場合は僕の事を揶揄からかって遊ぶというより、本気で責任を感じかねないので、それはそれでタチが悪い。



「もう! 二人とも冗談はやめてよ!?」

「あはは、悪い悪い。でもそれが嫌なら、それこそアルティメットエンドを攻略するしかないだろ? 聖剣も抜いちまったんだし」



 うう……それはそうかもしれないけど。



「要はリックが『人類滅亡〜』なんて重い物を背負わなくていいって事だ。いざとなったらレイモンドが責任取ってくれるってよ!」


 そう言ってマックスがまた僕の頭をクシャクシャと撫でる。



 マックスなりの優しさなのかな……って、結局レイに責任押し付けてるじゃん!?



「ああ、任せろ!! これまで以上にパットの側にいて、今度は私がパットの力になると誓おう!!」



 まさかのストーカー行為続行宣言!!



「まぁ、結局やる事なんて今までとそんな変わらないだろ」

「変わるよ! 『新学期が始まる前に早速王都近くの魔物討伐をして勇者の力を示して欲しい』とか言われてるんだよ、王様に!?」



 そうなのだ。


 これから月一ツキイチで魔物討伐しろとかムチャ振りされた僕だけど、勇者の実力を見せる為に早速討伐に行けと言われているのだ。

 とても今までと同じ様な学園生活が送れるとは思えない。



「安心しろ、パット! もちろん私も付いて行くからな!」

「どの辺りのレベルの魔物まで弾け飛ぶのか見ものだな……」


 僕の葛藤を他所に、二人はまたそれぞれに勝手に盛り上がっている。



 ああぁぁー、結局いつものこんな感じに収まるんですね、分かります。



 その後、ゲームのイベントや今後の流れなんかを色々セオに聞いた後、暗くなる前に僕達は研究所からおいとました。

 結局いつも通りにわちゃわちゃ騒ぎながら帰る僕たちを見て、セオは笑いながら手を振ってくれていた。






「うーん……。あれって、冗談……だったんすかねぇ?」

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