第42話 急転直下のハッピーエンド!! ……からの?
王都に戻って来てから三日後。
僕は王都にある、とある国立の研究機関に足を運んでいた。
何故こんな所へ来たかというと、今セオは転移者保護の一環として、この研究機関で暮らしているからだ。
セオに『話が聞きたいから時間をとってくれないか』と手紙を書いた所、今日なら大丈夫だと言うので早速会いに来た。
ちなみに、レイとマックスも一緒である。
「どうも、三人ともお久しぶりっす! もうすぐ新学期なのにわざわざ会いに来るなんて、何か急用ですか?」
「うん、ちょっと長期休みの間に色々あってね……。セオに、プリラビのシナリオについて詳しく確認したいと思ったんだ」
◇◇◇
「勇者認定っすか!? めちゃくちゃペース早いですね。確かにそれはゲームのイベントですけど、本来二年の終わり頃に起こるはずのやつですよ」
「うん、それにね、クリスフォード殿下やダグラス様とアンジェのシナリオも大分進んでる気がするし、隠しキャラのはずの王太子殿下にももう会っちゃったし。何か色々、変じゃないかなって」
王城で勇者認定されたあの日。
心配して僕の事を待っていたレイとヴィオレッタ様と別れた後、アンジェに王城で何があったのかを尋ねた。
『ごめんなさい、私の口からはちょっと…。でも、もうすぐ分かると思います! きっとパトリック様にとっても嬉しい事のはずですよ!』
アンジェはニコニコと、それは嬉しそうにそう言っていた。
多分だけど、アンジェはあの時知ったんだ。
『クリスフォード殿下は、生きている』って。
僕は、今まであった色々な事を思い出しながら、丁寧にセオに伝えて行く。
セオは考えながらゆっくりと口を開いた。
「そうですね。変というか、さっきも言ったんですけどめちゃくちゃペースが早いと思うっす。勇者認定とか、主人公のレベルが相当上がらないと起こらないはずなんですけど」
あ、それは多分シェフの気まぐれメニューのせいかと……。
「このまま進めていって大丈夫なのか? エターナルトゥルーエンド攻略に失敗したら、またヴィオレッタが……」
レイがそう苦しそうに言う。
そう、僕としてもそれだけは避けたい。
ヴィオレッタ様はもう僕にとっても大切な友達だし、レイにこれ以上死に戻りなんてさせたくない。
「エターナルトゥルーエンドが失敗というより、現状はアルティメットエンドに向かってる様な気がしますね。エターナルトゥルーエンドは、女主人公のエンディングで、勇者認定とか起こらないはずですから……」
「ええっ!?」
それって、僕が色々動き過ぎたから?
うわ、最悪だぁ!
「あ、でも現段階で親密度が高そうなレイモンドやマクスウェルのエンディングならワンチャンいけるかもっす! ダグラスやクリスフォードは、話を聞く限りアンジェリカとの親密度の方が高そうだし……。あ、早めに登場した王太子や、まだ出会ってない第三王子ならこれからでも十分狙えるっすよ!?」
狙わないよ!?
「「…………」」
ほらーっ!
セオが変な事言うから、レイもマックスも無言になっちゃったじゃん!?
「いや、あのね。どのエンディングが狙えるとかじゃなくて、僕はみんなが幸せになれるエンディングを迎えたいんだ。最悪でも、誰も不幸にならないエンディングがいい」
慌ててそうセオに説明する。
「ああ、皆さんはヴィオレッタ様を助ける為にエターナルトゥルーエンドを目指してたんすよね。うーん、……これはあくまで俺の予想なんですけど、多分ヴィオレッタが断罪されるルートにはもうならないと思いますよ」
「「「え!?」」」
突然のセオの発言に、三人の声が綺麗にハモった。
「そもそも男主人公を選択すると、そこまでヴィオレッタが悲惨な目に遭うシナリオって少ないんですよ。女主人公の場合と違って、悪役令嬢っていうより攻略対象の一人って位置付けの方が強くて」
セオの話はとてもめでたい内容なはずなのに、余りにも拍子抜けというか、呆気ない断罪回避にみんな呆然としてしまう。
「前に話を聞いた時点では、そこからどのシナリオに進むのか分からないし適当な事は言えなかったんす。でも、ここまでパトリック様が自分のシナリオを進めてる上にアンジェリカとヴィオレッタの親密度も上がってる状況を見ると、ここから断罪されるルートに入るのは考えにくいなと」
「そう、なんだ……」
僕とレイとマックスの三人で視線が交わる。
「「「…………」」」
あまりにも唐突過ぎて理解が追いつかなかったけど、段々と事態が飲み込めてきた。
つまり……
「つまり、ヴィオレッタは助かる、という事か……?」
「うん、うん、そうだよ! レイ!!」
感極まった僕は、呆然とそう呟くレイの手を握ると、ブンブンと上下に揺さぶる。
良かった……!
良かった、これでレイは死に戻らない。
これからもみんなで一緒に年を重ねて行けるんだ!!
「良かった、良かったね! レイ!!」
「ああ……。ありがとう、パットのお陰だ。やっぱり私の運命を救ってくれるカギは、パットだったんだな……!」
二人で泣きそうな程のテンションで手をブンブン振り続けていると、とても気まずそうにセオに声をかけられた。
「あの……。えー、……盛り上がってるところ非常に申し上げにくいんすけど……」
ん?
「ヴィオレッタの断罪ルートに向かう可能性が低いってだけで、みんなが幸せになれるエンディングに向かってるかっていうと、中々に大変な状況っすよ……?」
「へ?」
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