第11話 第二王子の母の記憶

 ああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 どうしてどうしてどうして!

 私のだいじなだいじな王子様が!!!!

 どこでを間違えたの!

 ずっと最適解を選んだはずなのに!!!

 私がノーマルエンドになってしまったから!?

 しくじったしくじったしくじった!


 __________


 私はまだ幼い頃、自分が前世でだいすきだったゲームに転生したことに気が付いた。

 しかも念願のヒロイン。

 どのルートも内容が重たくて少しでも選択肢を間違えると即バッドエンドで仮にハッピーエンドになれたとしても誰かしらが必ず不幸になる作品だった。

 だから私はそれが嫌でみんながみんなそれなりに幸せでだれも傷つかないノーマルエンドを目指した。

 私が妾になるエンド。

 このノーマルエンドは正直妾とか側妃制度とか一夫一妻制の日本に生まれた私は気に食わなかったけど。

 現実は悪事を働いていた私の実家が没落してしまい、行き場をなくした私の行く末を嘆いた当時の王太子殿下の婚約者現在の王妃様が私の居場所を作ってくれる救済措置でしかなかった。まぁ、この悪事を誰と暴くかでエンディングが変わるはずだったんだけど、普通は身分が高いとはいえ子供がなにかと動いても仕方なくない?と思っちゃうのが転生者の悪いところかな。陛下とはそういう寵愛関係にもなかったからとても気楽だった。流石に大事な友人の夫と肉体関係を持つとかありえないし。

 でもまぁ、一応実家が没落して犯罪者扱いになっていたから犯罪者の娘だって何も知らない人にはよく邪険にされていたっけ。

 ただでさえ犯罪者の娘なのにちゃっかり王の妾の位置についた私のことは他人が見れば面白くないよね。

 

王妃様たちからの恩恵もあって私は大好きだった平民サポートキャラの彼と事実婚みたいな関係になってだったけど。

 まぁ…あくまでも私は表面上王の妾だから子供は私と王の子ってことになったけど、生まれながらに存在しない者として生きるより絶対にいいって彼も言っていた。

 私がゲームとはを選んだからか、手にした幸せは私の元から次々と消えていった。

 仲の良い友人であった王妃様とのお茶会に持参した手作りのお菓子にはいつからか毒が検出されるようになった。

 はじめのうちは補給係が罰せられていたし、私の言葉も信じてもらえた。

 でも王とのお茶会では検出されないのに王妃とのお茶会では数回に1度出てくる毒入りのお菓子にいつからか

「きっと妾は王妃を恨んでいるに違いない」「王妃を害して自分が妃の座に着こうとしているに違いない」と噂されるようになっていた。

 王妃様も最後まで私を信じてくださっていた。けれど

「…ごめんなさい。貴女がこんなことをするはずないってわかっているの。私たちずっとお友達だったでしょう?…わかっているけど私の立場でこれ以上危険がある状態で共に過ごすことはできないの。貴女もわかってくれるでしょう?」

 そういって私は大切な友人を失ってしまった。

 次は王からの信頼だった。

 元々王妃と仲が良いから目をかけてくださっていたようなものだ。王妃への贈り物から毒が検出され始めてからは疑惑の目は明らかだった。

 そして、夫の失踪。

 詳しい事情は分からない。けどある日一枚の手紙を置いて彼は私の前から姿を消してしまった。

 この頃から、私はおかしくなってしまったのかもしれない。

 私のハッピーエンドのためにはこの子、名前だけの第二王子がカギになっているに違いない。


 あの時の私は確かにそう確信していた。

 私には成しえなかった本当のハッピーエンドを迎えるために本当の役割を教えてあげることにした。

 である第二王子が王位を継承する話も前世はたくさんあったし。

 色々と欲が出てしまった。きっとそれがいけなかったのね。

 やっぱり私にはハッピーエンドを迎える資格はないのかしら。

 変色してしまった銀の皿に盛られた食事。

 苦しまないだけ慈悲をいただけたということかしら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒロインが消えた日。 あんぬ @mugi_key

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る