第7話 ヒロインの話

 原作を知らないとはいえ、この作品がほぼ強制バッドエンドの鬼畜ゲーなんて聞いてないよ!

 なんでなんでなんで!!!

 私はよくある乙女ゲームのヒロインらしく振舞ったじゃん!

 貴族らしい振る舞いとかわかんないし、なんか見た目が綺麗めでかっこいい人と仲良くしようとしただけじゃん!

 それが王子殿下だったとか、公爵令息だったとか知らないよ!私そんなの聞いてないし!

 思えば最初からおかしかったんだ。

 私が前世を思い出したのはこれから入学!ってときだった。

 そっちの記憶に引っ張られすぎてこれまでの記憶があいまいになっちゃったのは痛いけど、言葉とか字はわかるし、平民から選ばれたものが貴族の通う学園に入学するって展開もよくあるし、作法はわかんなくてもなんとかなるって思っちゃった。

 まぁ、正直前世の私は12歳だったから元々いろんなことはわかんなかったけど。

 でもそれなりになんとかなるって思っちゃうじゃん?だって私が明らかにヒロインなんだもん!

 ピンクブロンドにアクアマリンなんてもうザ!ヒロインでしょ。

 最初の頃はよかった。

 原作がわかんないからとりあえずイケメンなきらきらした人たち何人かに声をかけてみた。

 この時は知らなかったけど、私高貴な身分の人たちばかりに声を掛けてたみたい。さすが私!見る目ある!って思ってた。

 よくあるテンプレのごとく婚約者たちがやれ婚約を結んでいない異性に触れてはいけないとかやれ許可なく愛称でよんではいけないとか言ってくるけどそれって貴族のルールでしょ?私貴族じゃないし関係なくない?は?貴族の学園に通うならルールには従うべき?学園は身分にとらわれず平等にって校風なのにおかしくない?

 確かに初めの頃の授業で貴族社会のルールについて授業はあったけど、それって結局貴族にしか関係ないし、私が勉強しても仕方なくない?って思っちゃう。大事なことなのはわかるけど。

 何人か私に優しい人がいたから、その愚痴を言ってみた。

 やっぱり何人かは微妙な顔をしたり当たり前のことだと言われたけど、何人かは私の意見に同意してくれた。

 全員ではないにしろ貴族でも同じことを思う人はいるみたい。

 私に優しい人たちはそれぞれ悩みを抱えていたように思う。

 なんでかみんなの悩みはわかったからそれらしいアドバイスをしたりそれっぽい意見や慰めをしたらみんな今まで以上に優しくなった。

 私のこと好きって言ってくれる人までいた。

 でも私は誰がすき!っていうのはなかったしまぁ、相手が傷つかないような返答をすることにしてた。

 お陰でみんなにいい返事をしちゃってたけど。

 一応、好きな人はいなかったけどゲームでよくあるメインキャラであろう第一王子殿下を最優先で攻略していくつもりだった。

 周回後開放系のキャラなのか、全然なびいてくれない!もー!

 殿下の婚約者は誰よりも私に対して厳しいし!でも言葉で言うばっかりで行動は起こさないから断罪の証拠にもならない。

 だからよくあるいじめを捏造したけど、そういうときに限って他の攻略対象にエンカウントしちゃうんだもん。このいじめは他のルートだったか~と思いながらあわてて軌道修正した。

 …軌道修正したはずなのに、なぜかバッドエンドになっちゃったみたい。

 本当に意味わかんない。

 知らない人に襲われて、突然真っ暗な部屋にいた。

 本当に意味わかんないこんなの無理ゲーじゃん。せめて次は知ってるゲームに転生してくれないかなぁ。

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