第4話 第二王子の話

 俺の愛した  がいなくなった。

 きっとあいつが手をかけたに違いない。

 兄上の婚約者だからといい気になりやがって。本当に許せない!

 俺が  と結婚すればきっと歴代のどの王よりも優れたになっていたのに違いないのに。


 兄上は本当に素晴らしい方だ。まだまだ学生なのに、既に父上の公務を引き継いでいるらしい。もし俺が王になった時も兄上に手伝って貰おうと思っている。

 兄上は性格も良くて誰からも親しまれているけれど、あいつがいるせいで兄上は  に冷たかった。

  は少し鈍感だから気が付いていなかったみたいだけど、俺にはわかる。兄上はきっと俺が王になるのが気に食わなかったんだろう。あいつもあいつだ。頭だけは切れるやつだから俺が動く前に  を消されてしまった。

 許されることならば俺もあの子の後を追いたい。でも立場がそれを許さない。俺は第二王子だから自分の身に何かあってはいけないからここをむやみやたらに動いてはいけない。でも許されることなら…。いや俺がそんなこと考えていちゃだめだよな。もっと兄上のようにならなくては!



 俺と  が出会ったのは本当に運命だと思う。

 その日俺は、試験で思うような結果が出せずに

「第一王子殿下はこれくらいの内容、10の年ですでに完璧でしたよ。」

 なんて教師に言われむしゃくしゃとしていた。

 兄上はすごく優秀だ。俺と2歳しか変わらないけど誰が見ていてもわかるほど完璧だった。

 第二王子だからか、兄上とは違う家庭教師をつけられていた。

 きっとそのせいだと思う。現に俺の成績が思うような結果じゃないからって第三王子には兄上と同じ教師をつけているし。弟にじゃなく俺につけてくれれば俺だって!と言いようのない怒りがわいていた。


 彼女は学園の庭園で花を愛でていた。

 そのピンクブロンドにアクアマリンのような美しい瞳は彼女自身が花の妖精のようで、学園の制服をきていなかったら俺はきっと彼女が人間だなんて気が付かなかったんじゃないかとすら思う。

 思わず

「麗しい人、名前を教えてくれませんか?」と聞いてしまった。

 彼女は「  です。うふふ、王子様みたい。」

 その名前や声すらも美しく、一目で俺は彼女のとりこになってしまった。

 どうやら俺が第二王子だとは知らなかったようで、それもまた新鮮で嬉しかった。俺を俺個人としてみてくれる唯一の人だった。

 だけど彼女は本当に妖精のような人だったから、俺だけの唯一ではいてくれなかった。

 でもそれも仕方がないことだと思う。こんなにも美しいんだ。俺だけのものにしておくなんて神が許さないだろう。ただ彼女が俺を一番だと言ってくれるそれだけで十分なんだ。

 兄上やあいつにも親切で貴族にはない斬新な考えをもって俺たちにその話をしてくれた。

 なのに、あいつは「いくら学園内は平等といわれているとはいえ、殿下や公爵家の者を許可なく愛称で呼ぶことや体に触れることはしてはなりません。貴女がここの生徒でなければどうなっていても文句は言えないのですよ。」なんて言うんだ!可哀想に  は泣いていた。

 兄上は婚約者がいる身だから  のことを慰めることはできなかったようだけど、その婚約者を咎めることもしないなんて!兄上は優秀だけどきっと人の心が足りないんだ。

「貴方が王様だったらいいのに。そうすれば私はこんな思いもしないし、きっと私たちみたいな身分にも良い世の中になるのに。」

 なんて言われると俺も頑張ろうと思えた。

 王位継承権はし、俺は妾の子だけど第二王子なんだ!きっと簡単に王になれるはず!

 王になれば法も変えて平民とでも結婚できるようにするんだ!


 そう思っていたのに。…あいつが…あいつが!

  のいない世界で俺は何をすればいいんだ。

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