7頁 引越した家
春、五月の連休。
午後、快晴の空に鯉のぼりが泳ぐ。
シゲルは『小学三年生』に成った。
畑の中の宅地に整然と立ち並ぶ新築の住宅群。
憲司達家族は見事抽選でこの新築の市営住宅に当たって、間借りの二階の部屋から引越す事に成った。
シゲルと憲司、道子がトラックから楽しそうに家財道具を下ろしている。
引越しも終わり、ひと段落したある日の午後。
シゲルがテレビを見ている。
憲司はステテコ姿で、新聞の「チラシ」を敷いて足の爪を切っている。
ふとそのチラシを見る。
「・・・おい、道子、旬のカツオが安いぞ。夜はカツオの刺身にしようか」
台所の道子はそれを聞いて冷蔵庫を開ける。
台所から出て来て憲司に、
「じゃ、ついでに鳥のササ身も買って来て」
「よしッ! シゲル、オメーも一緒に行くか」
シゲルは嬉しそうに、
「うん!」
憲司は急いで着替え、壁の柱時計を見る。
「三時か・・・」
道子は憲司を見て、
「早く帰って来てよ」
憲司は、はやる気持ちを抑え、
「分かってる。シゲル、行くぞ!」
道子はシゲルに『念を押す』。
「シゲル、父ちゃんに『パチンコはダメッ』って言いなさいよ」
頼りないシゲルの返事。
「うん」
つづく
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