6頁 道子の実家
夕暮れ。
「白鳥クリーニング」の看板に灯が点る。
実家の居間では家族が寛いで居る。
シゲルは玩具(オモチャ)で遊んでいる
悩んだ顔の道子が清吉(道子の弟)と良子(弟の嫁)に、憲司の浪費癖を『ぶち撒け』ている。
「もういやんなっちゃうよ。あの甲斐性なしには。パチンコばっかりやっていて」
清吉はタバコの先を灰皿に押し付けて、
「兄貴はあれが性分だ・・・」
道子は呆れた顔で、
「ショウブン? 冗談じゃないよ。一万円ちょっとの給料で四千円も五千円もやられたらたまったもんじゃない」
良子(清吉の妻)が道子の表情を見て、
「え~えッ! そんなにやっちゃうの」
清吉は湯呑みのお茶を一口飲み、
「兄貴は昔から博打(バクチ)が好きだったからなあ。パチンコぐらいは・・・」
道子の語気が徐々に強く成る。
「グライだショウブンだなんて、アタシだって内職ぐらいやって少しは家計の足しにしたいわよ。でもあそこは駐在所と違い、下の大家さんに知れたらみっともないじゃない。亭主は警官だよ?」
清吉はため息を吐いて、
「困ったもんだなあ」
道子は清吉を見て言い難(ズラ)そうに、
「・・・また・・・今度の賞与で返すから」
「しょうがねえ」
立ち上がる清吉。
良子か、
「犯人を捕まえるのは天下逸品だけどねえ」
清吉は箪笥の引き出しを開ける。
分厚い財布を開き、一万円札を三枚取り出し道子に渡す。
道子は得も言われぬ顔で、
「本当にすまないねえ」
つづく
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