第2話 名前

 親戚の子は私の部屋に入るなり、いつもの会話が始まる。

『ねぇお姉ちゃん!何して遊ぶ?』


「ちゃんと用意しといたよー。ゲームも沢山あるよー」


『わぁー、ゲームいっぱい!ありがとうね、お姉ちゃん』


 あぁ……この純真な一言が聞けるのがとても嬉しい。

 勿論ゲームは子の為では無く、自分がゲーム好きだから沢山買ってるだけなのだが、それは内緒。

 子供はにこにこしながら私に聞いてくる。


『お姉ちゃん!今どんなゲームが面白いの?』


「私が遊んでるのはMMO RPGが多いかな」


『MM……なぁに?わかんないよ』


「ゲームやってる人皆で魔王を倒す!みたいなやつだよ」


『みんなで?楽しそうだね。ボクにも出来るかな?』


「ちょっと難しいかな。じゃあお姉ちゃんがやってるの見てみる?」


『うん、楽しみー』

 親戚の子は目を輝かせて、私がゲームの準備している間からモニタの前に陣取っている。

 実はゲーム自体準備するのは全く時間がかからない。

 いつもやりたい時にすぐに電源を入れられる様準備されているからだ。

 しかし親戚の子の前だと、少しだけ私は普段ゲームやらないよアピールをしておきたい。


 そうして遠回りなわざとらしい準備をした後ゲームを始める。


『わぁああ、これ全部ゲームやってる人なの?』


「そうだよ、上に名前書いてある人は日本中、もしかすると世界中にいる誰かなんだよ」


『すっごーい!お姉ちゃんすごいよ、そんなゲームやってるんだね』


 子供はさらに食いついてくる。

 今更大した事ではないのだが、褒められるのは嬉しい。

 少しだけマップ上の移動だけを子に遊ばせると、子は凄く喜んでいる。

 どさくさに紛れデイリーのノルマをこなす。


『ねぇ、お姉ちゃん。この"みや"って名前はなぁに?』


「これは私のキャラクターの名前だよ」


『お姉ちゃんの名前、違うよね。何でみやって名前なの?』


「え……これはお姉ちゃんがつけたゲームの中だけの名前だから」


『でも、ゲームじゃなくても普通にみんなお姉ちゃんの事"みや"って呼んでるよね。名前違うのになんで?』


「あ、あはは、何でだろうね。他のゲームやろっか」


 何とか誤魔化す私。

 この辺りを突っ込まれると私もバツが悪い。早く他の話題にすげ替える事に。

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