第7話.親友

「自己紹介をしようね」


先生に言われるままにして自己紹介を始める少年


「あ、あの、えぇと、僕の名前は…「四季春しきはるこぬか」って言いますー。えぇっと四季や春、こぬか、と呼ばれているので、そう呼んでくれると助かります」


俺達の同年代の男子。その子は物凄く人見知りのようであり会話の節々が詰まっていた。

だけど、そんな程度で邪険に思うほど俺たちは性格が悪いってわけではない。

だからこそ、彼を歓迎する。


「こんにちは。俺の名前は天満葉雨!天満とか葉雨って呼んでくれ」

「わ、わかりました」

「俺達には敬語はなしだ。康太って呼んでくれ」

「え、あ、はい」

「だから敬語はだめなんだよ」

「うん」

「私の名前は雅出雲。何だって呼んでくれて構わないよ」

「わかった・・・」


自己紹介が終わり俺は四季に一言告げる。


「おい四季!俺の隣座れよ。授業教えてあげる」

「ありがとう」


彼は俺に向けてパッと微笑んできた。ずっと、下を向いていた彼の顔が初めてこちらを向き始めて顔が見える。その風貌はかなりの美少年であり、まるで女性のような小さな顔であった。

ただし、体はものすごくやせ細っていた。


「さて、仲良くなったみたいだし授業を始めるぞ」

「「「はい」」」

「今回は遺物に関してだ。遺物と言うのは大昔に存在したと言われている強力な武器だ。また、その中にはFDが武器へ変形した物もあるそうだ。

そしてその遺物の特徴として、まず一つ、この世に一つしかない。

二つ、何世紀も前の物のため超古代品である。

三つ、単純にものすごく強力な武器しかない

この様な情報で遺物に関しては僕たちは扱っている」

「そうなんですね」


四季もなんだかんだで俺たちの輪に入ることができたのだろう。

先生の授業を小耳に話しながら俺は四季と一緒に何が好きなのかというようなことを聞いていた。

その後もいろんなことの再復習といった形で四季と一緒に話を聞き訓練時間となる。


だが、四季は初めの俺のような状態のようにして魔法は彼に発現しなかった。

先生に魔力を流されたとしても四季は魔力が全く使えない

そんな状態で落ち込んでいた四季

俺は彼を慰めながらも「大丈夫だよ」といったことを伝える。


「皆は強いね…魔法も使えて、僕は才能がない人間だから何もできない。人を助ける何ってことはできない」

「きっと、何とかなるよ」


そんなことを月に照らされる中俺たちは話していた。

突如として四季は衝撃的なことを言う。


「こんなんでも一応強いって言われてきたんだけどなぁ…」

「ん?え、強いって言われてたのか?」

「うんそうだよ。身体能力は高いからね」


確かに俺たちと訓練をしている時回避行動や関節技などが得意だったイメージが先行する。


「ちなみに何で隔離の組織に来たの?」

「うーん、僕はね面倒ごとに巻き込まれちゃって、大切なものを守りたかった。それだけでがむしゃらに走っていって、いろんな物を失った代わりに守ってここに来た」

(俺みたいな感じだな。性格は似ていないものの考え方や行動の仕方は俺と似てるもんがあるな…)


今更だが感じるものがある。それは何なのかと言うと、四季と会話を行うとき異様に何かの胸騒ぎが感じる。

感覚は彼を見た瞬間に何かを伝えようとしている。

だが、それは一体何なのか全く俺にはわからない。


「じゃあ夜も遅いし訓練はこの程度にして帰ろっか」


四季がそういった時にはもうすでに21時を過ぎており真っ暗闇な状態であった。

だから、四季のその意見に俺自身も納得するかのようにして帰る。


「ガサッガサッ」


当たりの草が揺れる

四季と天満は警戒態勢に入り辺りを観察する。

何者かが手前の草にいる。


(誰だ?何者だ?)


ゆっくりと俺はその草むらに手を当て「ザッ」っと中を見る。

その草むらの中には誰もいなく、いた気配もなく、何もなかった。そのようにに見えるが

ハッキリと感覚から理解できる。


「「何かがいたね」」


四季も俺も気づいていた。

俺らを監視してるなにかがいた。

それも、一瞬で気配もすべて消す実力者…

何者だ?


「一旦帰って報告しようよ天満」

「そう、だね」


振り返りながらも俺は建物の中に入る。

借りた部屋の中に入りシャワーを浴びる。

殺気の草むらにいたやつは何か感じたことがあるような…

水が体自身を覆う。何かがいたのは確実だ。なんだあいつは…

そんなことを考えている間も時間が進んでいく。


2月25日


先生によると実践訓練により経験を積むことによって限りなくうまく生きられるとの事らしい。

そのため、一時的に本拠地から少し離れた場所で弱い敵と戦闘をするのだという事だ。

ちなみに、その実践の場所はと言うと丁度ここから約1km先の所らしい

俺自身まだ見ぬ外の世界がどのようになっているかすら全く分からないが結構な高揚感にかからが包まれる

ただし、一部の心に不安感という名の感情が残っている。そして俺は唾を飲み込む

そんあ事を考えながらも自然豊かな森を抜ける。

元々、都会と思われる、ビルの集団。それらすべてが倒壊してしまっており信じられないくらいに辺りは静まり返りそこら中には惨い残骸のようなものが存在している。

他のみんなはこれが普通、これが平凡なのだというように気にせず進んでしまっている。

いや、平凡ではないのだろう。我慢してるのだろう。だからこそ、昔の幸せを取り戻すためにも彼らは力をつけようとしてるのだ。そしてFDと対抗しようとしている。

やっと理解した。

彼らの覚悟という物。

俺はそんな事を考えず、単純に遊びまくっていた…

だからこそ、やっとここに来て覚悟する。


(FDを俺は倒しみんなを助ける)

(今までの甘い考えなんかで生きない)


皆とやっと同じ土俵に立てたような気がする。

そして場所につくなり、先生は倒壊したビルの中を指さしながら任務内容を言ってくる。


「じゃあ君たち4人で、このビル内にいるFDを倒せ」

「わかりました」

「FDの特徴は不明、ただ一つ言えることは今から相対する敵はFDの中でも最弱級の敵だという事だけだ。ただし、お前らの実力では、きついかもしれないがくれぐれも忘れるな?全員で助け合ってやれ。生存が第一優先だ。ちなみにだが、先生は中には入らない。外に出てきた生徒のみは助ける

以上」

「了解」



そのまま足音を消し俺たちは倒壊したビルの中に入っていく。

先生は外で見張っているとのことであった

だからこそこの任務は完全に俺達だけでクリアしなければならない。


「こちら右クリア。ただし、地下に向かう階段が有り」

「了解。左もクリアです」

「じゃあ地下へ行くか?」

「そうですね」


すっかり四季もこの空間になじんでおり必死に頑張っているようだ

そのまま康太を先頭、その次に俺、その次に四季、その次に出雲という形にして距離を開け降りることになる。


「ガタン」


途端階段のコンクリートは劣化していたのか、康太が地下へ落ちて行ってしまう。


「康太ぁぁ」


最中康太は落ちながらも俺に必死に伝える

苦いそんな表情でただただ伝えてくる


「いいから。お前らは周りを見ろ」


そのまま地下深くまで落ちていってしまった康太。

瞬間、俺は気を康太に取られていた。

真横にいる人型の白い物体

「死」

物凄い殺気が俺の隣から湧き出す。

咄嗟に防御するが防御の上から地面に向かって頭上から殴られる。

目に見えない速度であった。

やばい、防御はできダメージのカバーはできたがこいつの目的は別にある。

地下へ俺も衝撃を殺しきれず地面が破壊され落とされる。

完全に分断された。


(クソッ)

「ここは一体どこだよ?」

(これは…地面が見えない。ずっと体が落下してる。なんだ?この構造。結界を作り無限ループでも編み出してんのか?)

(とにかくここの無限ループをでなきゃ)


瞬時魔法を発動する。

この無限ループを引き起こしている結界をぶっ壊すことをイメージして魔法を放つ

魔力を体の中で安定させ…落ち着きを取り戻す

早く早く…魔力を体内で回せ

思い出せ、訓練の毎日を。皆で魔力を制御した毎日を

体が爆発的に熱くなる。


『水天冥王』


巨大な魔法陣が俺の眼前で出現し大爆発を起こす。

だが、結界が破られなかった。


(おかしい)

(一体ここはなんだ?)

(考えろ考えろ…もしかしたら結界ではなく本当に地下へずっと穴が続いている可能性)

(ん?)


下を向いた天満が気づく。そう、床が見えたのだ。

つまりは、単に長い穴であっただけであって別に結界と言うわけではなかったのだ

水を地面に発動させることにより落下の勢いを軽減するようにする。

そして地面に勢いよく落下する

全身は弾けるかのような大ダメージを負う。

「グッ」

だがそんな痛いといったような弱音を吐く暇は無く…

感覚からの察知恐怖感からの察知

体の芯が全身にわたり脳へ緊急信号を渡す


(何かがいる…)


冷たい息が俺の耳元で吹かれる。

さっきの白い奴とはまた別のFD?

いや?こいつはFDなのか?

フードをかぶっている人型?のような奴…

瞬時感じるとんでもない圧

魔法を展開しろ


『水王天』


相手と俺自身の距離を開けるためにも大技を相手の眼前で発動させる

その技をかき消すようにして相手も同時に技を発動させる


『シャル』


歪んだ声、大きな魔法陣、異様な空間内に放たれる紫色の光線

光線は俺が放った水をかき消し、俺の心臓を狙うかのようにして一直線に飛ばされる

確実にひとつわかる事とすれば、この光線に当たれば一撃で死ぬ。

光線をよけるかのようにして、俺は空を舞う。

間一髪の避けだったがそれを見逃す敵ではない

まずいッ

そして空中の最中魔法を打とうとするが

避けた光線が壁に当たったことによって出来た爆風が背中を押すようにして破裂する


(体制が崩れる)


そのまま地面に叩け付けられようとする瞬間

さらなる追撃が天満を覆う

顔が見える…

艶やかな少女の顔に鬼のようなツノが見えてしまう…

確定した…こいつは人型のFDだ。

相手のFDは一瞬にして俺の真上を取り攻撃を放とうとする


「上ッ」


追撃の一撃…

ぶん殴られる

全身に回る激痛…

そして、脳に回る揺れ

これは…脳震盪が起こされたのか

だが、耐えろ。大丈夫だこの程度ならまだ立ち上がれる


(チッ・・・あのFDいつのまに?)

(っていうか何だよこの地面を楽々と抉る怪力)

「ねぇ・・・」


心臓が撫でおろされるような気味の悪い感覚。

立ち上がろうとする俺の胸を片手で触ってくる

心臓が鷲掴みにされているような感覚

全身の鳥肌が止まらない


(こいつ…何が目的で?俺を殺すんじゃないのか?)


このFDは俺にとどめを入れれるはずなのだが、入れてこない。

一体どういうことだ?

ただし、とどめを入れてこないのなら話は早い

魔法を展開してこっちがとどめを刺す番だ


『展開術・ヒオリ』


一瞬にして辺りが氷に埋め尽くす

一瞬にして追撃をFDに行おうとするが

そのFDもまるで、一筋縄でいかないといったように技を発動する。

詠唱のない魔法?

いずれにしてもどうでもいい。

単純な魔法のぶつけ合い

ここで負けた方の死亡だ。


~~~~~~~~

思い出す

先生の言っていた言葉


「量気をFDが使ってくることだってあることを忘れるなよ?」



思い返した。まっず

もしも、量気の力だった場合魔力は簡単に敗れてしまう

案の定、俺の作った展開術は破壊された

これでも今出せる最上級魔法の一つなんだがな…

俺はとにかく魔法を放とうとする

右手を銃にするように構え魔法を放とうとするが


「ッ…」


魔法切れだ…

クッソまずい。

訓練の時は魔力精査をメインにしていたが魔力量に関してはあまり使っていなかった事もあり、完全に魔力量に関しては油断をしていた

無理やりにでも魔法の残りかすをぶつけろ

このFDは笑ってやがる。

だからこそ理解できる。

油断してやがるやつに一撃食らわせるのが一番効くんだよ

俺の魔法の属性は水と氷の二つ

今ここには相手のFDによって溶かされた水たまりがそこら中にある。


(いける)


水たまりを利用して巨大な技を編み出す。

今までやったことがないか一か八かの賭け

ギャンブルはあんまし好きじゃねぇんだけどな…

ぶつけてやるよ、俺が作った秘儀の一撃


『水天』


辺りの水がうごめき、真空を震わせる

そして水が空を浮くと同時にFDに向かって飛び掛かる。

ただの水だからこそ、FDは油断している。

ただし、俺の水天の能力は特殊なもんだ。

水天の効果で動いた水に当たった者は魔力を奪われ麻痺状態になる

そして奪われた魔力は俺の物として吸収できる。

FDはただの水だと思い、気にせずこっちに来ようとするが、水に触れた瞬間FDが違和感に気付く。

流石にFDだからといってバカではないのだ。

魔力が消費されていることに気づき水に対して魔力をぶつける

が、水は消えない。水は形を変え柔軟にFDを追尾し逃さないのだ

FDもさすがに危険さを理解したのか

俺の方を見る


(さぁどうする)


こいつまるで魔法発生源である俺を殺せばすべてが完璧に済むと言わんばかしに突撃をしてくる

一瞬で眼前に近づいて物理攻撃を行おうとするFDに言ってやる


「おい、忘れたのか?俺はお前のおかげで魔力が復活したんだぜ、そんな不用意に近づくと…死ぬぞ?」


『水王天』


水しぶきが飛ぶ。

光線のように一直線に水の塊が飛ぶ

その技を放った直後感じることとなる


(やっぱり化け物だな、どんな体してんだよ?)


このFDは俺が顔に向かって技を発動した瞬間、体をそるようにしてあおむけで耐えやがった。

どうなってんだよ?

FDの体制はと言うと、足の筋肉だけで立ち上半身を仰向けにしているのだあ。

その上でFDは左足に重心を置き右足を首に引っ掛けようとする。

俺は攻撃をよけられたことに反応が遅れ、右足で首をひっかけられた俺は勢いよく顔面から地面に向かって叩きつけられ、その衝撃でFDは振り子のようにして空を舞い態勢を安定させる。

どんな技だよ?

そこに怒り狂ったのか訳の分からない言葉を発しながら彼女は右腕に炎で出来たなにかをまとわせ、もろに攻撃を仕掛けてくる。

俺は鼻血を出しながらもそれを避けようとするが、顔面が地面と衝突した時の揺らぎにより態勢は安定しておらず左鎖骨部分を炎の拳によってぶつけられる。


「あぁ…グッ!」


やけどどころの騒ぎではない…

そして同時に衝撃により体がめきめきと言いながらも飛ばされかける。

重心を足に置いていたおかげで壁との衝突は免れたが左腕が動かなくなり満身創痍と言った様な状態だ

痛いがやるしかない。俺はまたしても右腕を上げ銃のような形になるように手を動かし構えを取る

魔力がある今やるしかない

魔法陣を展開しようとするが、FDはもう容赦しないといったように技を打つ


『シャル』


光線だ。

だが、その光線は俺には当たらず魔法陣にぶつかる

パリン

割れるような音と共に崩れる

このFDは俺が今から放つ魔法がやばいと理解したのかすぐさま破壊に移行した

つまりはもう俺を生かすことはないって感じか

油断することもないって感じか


(やばい…負けるかもな)

(いや、俺はもう負けねぇって決めた…だから…)

「ドッカーン」


爆発音?どこからだ…

上空から‥の音…?


「ゴーンッ」

(誰かが上空から物凄い勢いでここまで飛び降りてきたのだろう)

(そしてゴーンッという鉄の音は地面に勢いをつけたため出た音)

「天満。危ないよ…」


その音を発生させた者はそう俺に向かって一言放つ。


(何が起きてるんだ?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る