第5話.情報量

その後の記憶はない今は?ここは?みんなは?どこだ?

様々な疑問が俺の頭をよぎる


(落ち着け…)


周りに焦点を当てる

周りには、森や木々が集まりまさに自然豊かな場所という印象が頭の中で先行する。

だが、そんな自然に囲まれている中俺は一つのベッドの上に搬送されている

そして穴の開いていた俺の腹の傷は癒えている、空腹感が体を支配し急激に体が気怠くなってしまう。

立ち上がろうとするが、体にはさらなる負荷がかかり体中に痛みが降り注ぐ。

理解を求めるためにも出来る限りの大声で叫ぶ


「お~い、誰かいないのか?」

「静かにね~」


突如として聞こえる女性の若々しい優しそうな声

その女性は俺の後ろに立ったままゆっくりと口を開く。


「ねぇねぇ。大丈夫?ふふん!私知ってるよ。えぇと名前は確か甘味かんみだっけ?」

「あまみです。ていうかお父さん知ってるよみたいなノリで言ってこないでくれますか?」


その女性はきょとんとしながらも俺の顔を見てくるが、また会話を再開する


「了解甘味君ね」

「あまみです」

「それでさ、甘味はまだ理解が追い付いてない事でしょう!な、の、で私が何が起こったのか現状を教えてあげましょう」

「あまみ…というか呼び捨て速くないですか?」

「では、まず聞きたいことは何かありますか?」

「あー無視ね…まぁはい!質問はあります」

「なんでしょうか」

「あなたは人間の言葉を話せないようなバカなのでしょうか?」

「何もないね。了解」


そんな冗談めかしたことを言いながらも、彼女は敬礼のようなポーズをしながら少しだけ舌を出しながらも、いたずらっぽくあざとく笑っている

この女性を一言で表すならばいたずらっ子なのだろう。

いや、そうじゃなかったらおかしい絶対!


「まぁ甘味って呼んでくれていいですけどまず貴方の名前は?」


そんな純粋に聞きたかった質問に対して吐き気がするような言葉を返してくる


「先に挨拶するのが筋なんじゃ?」


さっきとは打って変わり真顔でこの女性は言ってくる。

その真顔も相まって、更に気が悪くなっていく

それに、何なんだろうかこの女性のペースに流されまったくもって会話が進まない。

だから取り敢えずは話が分かる人が来るまで寝るか!そうしよう!


「やばい人と話したみたいでした。寝ます」

「ごめんって~冗談じゃん少しは許してよ甘味~」

「すごく馴れ馴れしいです‥ね…あと、早く甘味も直してくれませんか?」

「それで、私の名前だけど「夢圦夕ゆめいりゆう」って言うんだよ。ちゃんと覚えてね」

「現在俺は、夢圦さんには絶対言われたくないような言葉が口から出てきたことに俺は物凄くビックリしてします。しかも甘味については無視ですか?」

「細かいことはよくてさ、何か聞きたいことあるでしょ」

「まったくもって細かくないんですけどね…夢圦さん」

「まぁまぁ落ち着きなはってさ~」


本当に会話が恐ろしいほどに進まない事に俺自身がびっくりしてる。


(俺はどっちかと言えばツッコミよりもボケ担当なのに…)

「あの、夢圦さんここは一体?」

「ここはね~化け物を実験する本拠地って言えばいいのかな」

「実験何って危険じゃなくて?」

「そんなことを言ってる暇がないくらいには全国が化け物により多大なダメージを負った。

だって、おかしいと思わないかい?確か甘味のいた学校も化け物に襲われたんでしょ。

それを単純な人間が相対して勝てるわけがない。つまりは今もなおこの世の全人口が減少していってしまってる

だから、人間は化け物に対抗しようとしてる。単純な考えじゃないかな?」

「じゃあ、少なくとも化け物の実験なんかじゃなく殺せば…」

「殺せないんだよ。実力がTOP級のクラスになると不死身みたいな本物の対処のしようがない化け物が出てきちゃってね。

だから、私たちは化け物を捕獲し脱出できないように隔離する

そして隔離した場所で何度も実験し対抗策を見いだす。ここが現在の人間の進歩段階だよ」

「でも、そこまで、もう既に行ってるのか…え?早すぎじゃないですか?そんな本拠地ができる何って…つい最近化け物が出たばっかりですよね」

「あぁ…言い忘れていたかもだけどね。甘味が腹を貫かれて8日間かな?確かそのくらいは眠っていたんだよ。その間に元警察集団が組織を作った」


なんとなく彼女の言いたいことはわかるが情報量が少し多い。

俺の頭はそんなにもすんなりと情報が入るわけではない。


(まず第一に化け物に対抗する元警察集団の組織が作成され化け物に対抗する策を見つけだすためにも化け物を実験している。そんなところなのだろう)

「なぁ夢圦さん多大なダメージっていうのは?被害っていうのは一体?」

「被害かぁ…まぁ約8割以上の人類の消失が起こったのは確実だよ…」

「そんな…」


訳が分からない。だって信じられない、約数日にしてほとんどの人間が死んだという衝撃情報を一瞬にして淡々と言われたのだから。

思い出す。出雲や康太、クラスメイトに対して。瞬間俺は夢圦さんにすがるように聞く。


「皆は?皆はどうなったんですか…?生きてますよね。ね…」

「うーんと、その皆に当てはまる人間の名前は?」

「雅出雲や三角康太、他にも俺と一緒に来たはずの生徒は?」

「…安心して生きてるよ。大丈夫だよ」

「はぁ、よかったよかった…本当に」


安堵の感情。

体がグッっと楽になる。きっと俺自身どうなったが感覚でずっと気になっていたのだろう。

ホッっと体に力が入らなくなり、頭が倒れてしまい床の中であおむけのような形になってしまう。

完全に体が消耗しきっていたのだろう

そんな俺を覗き込むようにして彼女は見てくる。

そして微笑みかけて慈愛のような目で薄っすらと笑い


「よかったね」


ただ一言。ただすべての気持ちがその言葉には詰まっており優しい一言だったように思える。

俺も彼女に一つ言葉を返す。


「はい、よかったですよ」


そのまま彼女は俺の頭をそっと撫で、鼻声を出しながら気分良く足をぶらぶらと動かすようにして鼻歌を歌いながら時が進む。

安堵感による静寂

ただただこの静寂な空間が愛おしい

彼女と目が合う瞬間彼女の慈愛の表情…

見た瞬間辛かった涙が溢れそうになる。

だが、彼女は他人だからこそ、俺は涙が出そうなのを止め質問を続ける。


「組織っていうのは?」

「あぁ組織ね。組織の名前は「隔離かくり」言葉の通り化け物の隔離をメインとしながら人間同士と協力しながら戦う。そんな組織だよ」

「なるほど…ちなみにもう一度聞きますけど俺の名前は何で、す、か?」

「か、ん、み」

「あぁそこは変わらないんですね」

「えへへ~まぁね~」

「俺は化け物に殺されたと思ったんですけど、どうして助かったんですか?」

「難しい質問をするね~」

「何があったか言うだけの簡単なお話じゃないんですか?」

「そんな簡単なお話じゃないよ」

「まぁ役立たずな私とは違う強~い強~い姉が貴方たちを救った。そして、死にそうだった貴方は皮肉にも化け物の力によって全回復をした」

「待って待って。ツッコミどころが多くないですか?」

「そう?」

「まず一つ目!強いって言っては元は人間。化け物に勝てるわけがなくない。違う?」

「ざんね~ん。違いま~す。まぁ行ってしまえば化け物に対抗できる特別な力があるんだけど、ここに関しては説明が難しいからパス」


だんだん彼女の性格を理解してくる。

めんどくさいところはとことん適当になるのがボケが満載ないたずらっ子みたいな感じか・・・?

まぁ不思議ちゃんって思っておけばいいか。


「じゃあ二つ目ね!役立たずの私っていうのは?」

「そういうところがノンデリっていうんだよ。人間だれしも触れてほしくないところはあるでしょ。」

「あ、ごめん」

(聞いてほしいからてっきり会話の節々に入れたのかと思ってた…)


気まずい…

何の言葉を発せないくらいにはシーンと静かになる。

俺自身場を和ませようとするが彼女のほうが一歩早く。


「で、甘味はもう質問がないくせに私に対してツッコミどころが多い何って言ってきたんだ」

「違うよ、違うよ。じゃあ三つ目!」

「あいよ!こいこい」

「化け物の力によって全回復したってことについて聞きたいよ~先生~」

「は~い私が先生です。ではまず化け物について話していきますが、なんか悪い化け物じゃないよって感じな種類の化け物もいるらしくてね。そいつらの力を使って回復とかを行ったり、使役して攻撃を行ったりとかをお願いしたりできるって感じ。だから、化け物=敵ではないけど、いつ危害を加えてくるかワカンナイよぉ~」

「あぁソウなんっすね。で、俺を救ってくれた化け物はというと…」

「ノリが悪い!で、化け物ってのはぁ…あぁここの事だよ」

「ここ?」

「うん。ここ」

(????????)


疑問符で頭が埋め尽くされる。

そんなキョトンとしている俺を見ながら仕方ないなぁといったような表情で説明してくれる。


「化け物とはいっても物質や概念って言うような物も現れて、えぇとえぇっと例えばだけど、この空間内にいれば、どんな存在であろうと常時回復を行ってくれる存在みたいなとかね。それで理解できましたか?私の生徒よ」

「は、はぁ…」


一応もう少し情報を聞きたかったのだが聞く前に彼女は焦りながらも寂しそうに発言をする。


「甘味の友達が戻ってきたようだよ、私もすることがあるからお友達にいろいろ聞くといいよ~。

それでもわかんないことがあったら是非色々聞きに来てね~」


そして急激に俺の耳に顔を近づけ言う


「だって私はあなたの先生になったんだから…じゃあばいば~い」


そのまま彼女は施設内に入っていってしまった。

本当に自由奔放な人間だ…

本当に不思議ちゃんだ…

同時刻康太はというと

ゆっくりと施設内にある高度治療室である森の中の部屋へと入り天満のいる元へ向かって歩いていく


「おぉ天満起きたのかよ?」

「あ、康太じゃん。無事で何よりだよ本当に…」

「それはこっちのセリフだバァカ。腹に風穴開いたやつがまさか助かる何って思う分けねぇだろ」

「俺はなんだかんだ言って生きれるんだよ」

「何言ってんだよ。だけど、次からはあんな無茶やめろよ頼むから」

「はいはい」

「はいはいじゃねぇよ。そういうところが天満の性格の中で悪いところだよ。本当に」


ちなみに、その後とは言うと

康太にある程度のデジャブを感じながらもここがどんな場所なのかを聞いた後

俺はそのまま疲れ切ったこともあり、料理を康太にもってきて貰った後すぐさま寝てしまった。

ちなみに料理の内容はハンバーグとまさに最強とあらわしていいほどの美味なメニューだった。


2月21日早朝

天満は目を覚ます。

扉をノックする音が部屋中にこだまする

あーそういえば康太によるとここは隔離の組織の高度治療施設…らしい。

目をこすりながらもゆっくりと言葉を紡ぐ。


「はーい」


ガラガラと扉が左へ開く

そこには、雫と出雲の姿があった。

何事かと思って俺は立ち上がろうとするが、まだ完全には体が完治しておらず激痛が全身をことばしる。


「う、、うぅ」

「ちょ、寝てて大丈夫だからね」

「う、うん。それでどうしたの?」

「大したことじゃないかもしれないけど天満に感謝を言いたくて…」

「感謝?なんの?」


そこで雫が出雲と天満の言葉を遮りバカにしたように俺に向かって言う。


「なんの?じゃないよ。ばかじゃないの?助けてくれたことだよ気づけ」

「言葉遣いが悪いなぁ」


そんな風に言い合いをしながらも感謝を出雲から伝えられる。


「ありがとうね。天満」


そんな一言。だけど、嬉しかった。居場所がないと思っていた窮屈な自分にも人の助けができたようでいろんな感情が俺自身の中で埋め尽くされる。

それだけで、出来ることはやって後悔しなくてよかったと思えた。

そんな幸せな感情で心が温まりながらも二度寝をしようとして天井を向く。


「・・・」


この場所は森のような自然が一部屋一部屋に植えられている。そして天井もものすごく高い。

俺は布団の中に入りうつぶせになる。

そして目を開けた…

高い高い天井。そこには真っ黒の髪の毛が垂れている


(え?)


よく見るとそれは人の顔であった。


(は?)


頭だけがぶら下がるようにしているのだ。

半眼がこちらをぎょろっと向く

恐怖を感じてしまい俺は布団の中へ頭を入れ中に入ってしまう。


(はぁぁぁぁぁぁ次から次へとなんだよ。なんか化け物がいるって…)

(助けて…)

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