修行と冒険の日々

第2話 新生活

「ねえ。りょーくん。起きて。仕事でしょ」


 すぐに彼女の家へと、引っ越してきた。


 彼女は、料理などもこなし、意外と生活能力があり問題ない。

 たまに、皿などが空を飛んでいるが、それもまあ問題ない。


 ただし、困っていたようなので、当座の生活費は僕が出した。


 基本はワンコだが。修行時には豹変し、厳しい師匠となる。


 ここは勤めている研究所から、真っ直ぐ街道へ出たところで、二キロ程度の距離。

 近くにスーパーもあるし、生活をするには便利なところ。


 引っ越してからの生活。先ずは夜のお勤め。


 帰って、すぐに瞑想に入る。

 魔力を感じる修行。

「ほうら、体を流れる血液の流れ。それを感じて」

 彼女は背中にぴったりくっ付いて、耳元で囁くように言ってくる。それは、甘えているのではなく、背中から強制的に魔力を流し込んできている。


 これが、ものすごく苦痛。

 体の内側で、血液が沸騰でもしているかのようだ。

 のぼせるし、目玉も圧力に負けて、スポーンなんて音を立てながら、勢いよく出てきそうだ。


「ねえ、流れはわかった?」

「熱いのはわかった」

「熱い? 熱いのは、私の気持ち…… あっ」

 どう見ても、彼女の顔にやばいと文字が浮かんだ。


「どうした?」

「いえ別に…… 今日、何を食べたい?」

 笑えるくらい、目が泳いでいる。


「何をごまかした?」

「ええと。魔力の質がちょっと違って…… ちょっとしたミスだから」

 そう言いながら、本当にわかりやすく動揺している。


「あなたが強くて良かったわ。普通なら爆発して死んじゃうから」

 だらだらと冷や汗をかき。

 軽くない、ふざけたことを言いやがった。


「ちょっと話をしようか」

 俺は立ち上がり、彼女の前に立つ。


「あー。お食事のまえに、あたしかな? ねっ。おこっちゃいや。ほらかわいいかわいい。あっ。おっきくなったし。機嫌直して。ねっ」

 とりあえず、する。


 その状態で、魔力を流す。


 言い方は悪いが、おしっこが逆流する感じがする。

「ああ、これか」

「今度は熱くない?」

「ああ。大丈夫」

 しばし、魔力を流し込まれる。


「わかったなら、今度は私に流し込んで。ああと、魔力の方ね」

 なんとなく、お腹から広がり。胸の辺りまで来たそれを、逆に流し込んでいく。


「ああ、そうそう。上手。この方がわかりやすかったか。じゃあ毎晩しよう」

 彼女のしっぽが揺れる。


 彼女は、興奮状態が強まると、牙が伸び、しっぽ、耳の順に生える。

 最終形態はウルフ化できるということだ。

「恥ずかしいからイヤだ」

 そう言って見せてくれない。


 結局、二時間ほど魔力の出し入れをして、晩ご飯。

 そして風呂へ入り、また繋がって魔力の出し入れ。


 二週間もすると、一人で魔力操作ができはじめた。

 体の中で温かいものが、意思により巡る。

 その内やっと、体外に放出できるようになってきた。

 だが、それの弊害。


 彼女が、発情をする。

「魔力の匂いか」

「そう。大好き」

 そう言って、彼女が首筋を舐めてくる。


「もう」

 最近は、魔力による身体強化をマスターしてきた。

 初期の魔法。魔法の第一歩。外に出さず筋力などに作用させる。

 治療魔法などにも通じ、免疫力の活性化や、細胞増殖も促せる。


 そして、今度は体外放出させた魔力に、属性を付与する。

 付与の方法は、炎系なら燃焼に必要なイメージを乗せる。


「あー空気、酸素。混ざれ。ぼん」

 掌で、一瞬出た火が、パンと音を立てて破裂する。


「あっほれ、もう少し、もう少し」

 彼女は、両手にボンボンを持って、応援中。

 彼女は、さみしがり屋のため、杉田淑子すぎた としこさんが亡くなって、葬儀とかを終えた後。

 一人で、仮装をして遊んでいたらしい。


 此処の登記とか、遺産の相続とか気になったが、年の若い杉田淑子すぎた としこさんが相続したようになっているらしい。

 魔法で担当者の記憶を、ちょっといじったと言っていた。


 そんな俺でも、一年を過ぎると、基本魔法が使えるようになっていた。


「そうそう。世界の森羅万象。流れは決まっていて、逆らわないと意外と簡単。逆らいねじ曲げるのが、空間魔法などのものとなる。おわかり?」

 今日の先生は、革のボンテージ。セパレートだからお腹は出ている。

 そして伊達眼鏡と、ムチ。


 どこからか出てきた、ホワイトボードに説明が書かれる。

「先生。それは、この世界の中に別の世界を創るという事でしょうか?」

「おしい。世界創造はあくまでも別の世界。後はそれを繋ぐだけ。おわかり?」

「ああ、先生が失敗して、こっちに来た原因ですね」

「くっ。そうです。ことわりを曲げるのは非常に難しいこと。気を付けましょうね」

 そう言って頷く。


「それでは試しましょうね。あらかじめ何かに帰還用のマーカーを作って、魔力の繋がりをこの世界に維持。そうして、一点に対して強力に魔力を流し、空間の限界を崩壊させる」

 空間に黒い点が出来上がる。


 イメージ的には、ブラックホール。

「できたのかな?」

 むにょっと広げてみる。


「なんだかあなたがすると、その広げる手つきがエッチ。ゾクゾクしちゃう」

 変なことを言っているが無視をする。


「先生、向こう側。森があります」

「あちゃあ。異世界ね。えーとマーカーは大丈夫。りょーくん、明日休みよね」

「行くのか?」

「行ってみましょう。異世界の内見会へご案内」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る