第25話 「エピローグ」
「――隙だらけの策略はどうだったかな?」
「…………」
仮説部屋の裏口に一人、帽子を被った男が倒れた。
「答えてくれないのかな。……あぁ、しまったね。もう喉は斬っているのか」
「…………」
血塗れの床は全て帽子の男のものだった。
斬れた喉を回復魔法で治すも、グェンの剣が関節を刻んでいて逃げる事はできない。叫べず逃げれずの状況に、帽子の男のは目で睨むしかなかった。
グェン=レミコンサスは穏やかな表情を変えない。
「君は勝手に迷宮に入って居なくなった。これで行こうか。どうせ向かったんだろう?王族は貴族と異なり臆病な現場主義が多いと聞いている」
「…………」
「話を聞く気は全くない。拷問なんて事も、命を断つ事も、私はしないから安心してくれて構わない。君から何か探れるとも思ってないさ」
「…………」
「そうだね。顔が綺麗な成人男性だ。歯を全部抜いて、顎と関節を切ってから性病まみれの人身売買にでも売り飛ばそう。肉便器として可愛がってもらいなさい」
「――――ッ!!」
そこで初めて、プライドで無視していた心が折れたようだ。
バタバタと暴れる貴族――否、王族の表情が壊れる。
「――――ッ!!」
グェンが帽子を優しく外す。直後、その所作とは全く異なる動きで、美しい金髪をぐっと掴み持ち上げた。
鋭い剣気と眼光が王族を睨み、動けない貴族は喉がないのに喉を鳴らした。
「失った代償はデカいぞウジ虫。命を賭して償ってこい」
グェンの発言は本気だった様で、売り飛ばす準備を整えてからその王族を伯爵の遣いに引き渡した。
××××××××××××××××××××
酷い雨が降っていた。
デスフラッグ出発から26時間後。
学園の門の前で巨竜車を降り、濡れながら歩く一行。
とても勝利したとは思えない表情で校舎の入り口に向かおうとしていた。
「――どうして」
校舎の入り口には参加者の帰りを待つ多くの生徒が居る。
雨に濡れるため門までは来ていなかった。
しかし、一人の生徒が門の前にずぶ濡れで立っている。
エリシア=エミリールだった。
「――ッ!?」
ノアールの全生徒が苦しい表情をした。
「どうして……救えなかったの……?」
その痛々しい表情を見てライラが震える。
同時にブロン、ブル、ルージュの一部生徒も胸が痛んだ。
「――見ていた私には、分からない」
誰も話をする事なんてできない。出来るはずもない。
今ならゴブリンが現れても負けてしまう程に身も心も削れている。
あの瞬間を振り返る余裕なんて今は無かった。
「…………それでも無事で……良かったよ」
全員が苦しそうにエリエリを見た。濡れた桃色の髪から表情は見えない。
深く深く俯いている。大雨の視界の錯覚か。肩が震えている様にも見えた。
その両手には可愛いコースターが握られている。
彼の笑顔が浮かんでしまい、握る手が強くなる。
『治ったらまた来ような』
ノアールの一行はコースターが何を示すのかくらい予想がついていた。
だから、哀しみを分つためにエリエリと共に校舎へ向かった。
ノアールは最後の仲間とやっと合流できた。
本当の意味でデスフラッグは終わりを迎えた。
そして、何ヶ月経っても少年が戻ることはなかった。
一章『デスフラッグ編』 終了
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あとがき
こんにちは、神里です。
一章終わりました。
話数を細かく分けてますが、サクサク読めるようにかなり添削しました。とはいっても多分長く感じてしまうかも知れないです。説明が多いのに読んでくださった方、ありがとうございます。結末は最悪ですよねすみません。インスタントな場面設定とタブーな展開を掛け合わせてみたくなりこの物語を描いています。楽しく読んでいただけるようにこれからも頑張ります。
二章は完成しているのでできるだけ早くまとめてあげていきます。
評価やいいね等、宜しくお願いします。
引き続きご挨拶にもいきます。仲良くしてください。
次回、二章『学園トーナメント編』です。
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